Target20 動いた そして 変わった
「たしか、この辺だったよね…沢田家。一回行っただけだからうろ覚えなんだけど…」
今日は休日! とつじょ携帯に電話がかかってきて、『雲雀さん!?』なんて思ったけど
考えたら雲雀さんだけ着信音変えてたわーって気付いて、ガッカリしつつ電話に出たら
『お前今雲雀だと思ったろ?』
と電話でてすぐに心を見透かした赤ん坊の声がいたしました。図星で思わず声が裏返ってしまったじゃないか!
リボーンの用件は紹介したい人がいるから家に来いとのこと。
リボーンの家=ツナの家なわけで……暑い中必死こいて歩いてるわけなんですが。
「沢田、沢田、沢田……」
「おい、お前なんでここにいるんだよ」
「獄寺、獄寺…って違う! 思わず獄寺の家を探してしまった…、ってなんで獄寺!?」
話しかけられてびっくりしたじゃないか!
振り返れば獄寺が、大きなスイカを持ってそこにいた。
「俺はこれから10代目のところに行くんだよ」
「あ、同じ。リボーンに呼ばれちゃって…なんか紹介したい人がいるんだって」
「はぁ紹介? 新しい殺し屋か」
「…んな物騒な日常会話はヤダヨ」
なんで新しい殺し屋の話に花を咲かせなくちゃいけないのさ…。
こう、色恋沙汰とか、青春の話に持っていこうよ!
「じゃー一緒に行こう」
「つっても、あと10mもねぇけどな」
にやりと笑って先を行く獄寺の背にドロップキックをかましたくなりました。
さて、沢田家についてインターホンを押すとツナがうっすら汗をかいて出てきた。
「、ごめんなリボーンが急に呼び出したみたいで…。あれ、獄寺君はどーしたの?」
「このスイカ一緒にどーすか? めちゃくちゃ甘いらしいんスよ!」
獄寺のスマイルは、10代目の前だけですか。
私の前ではあんなアクマな笑顔しかしなかったくせにー!
「す…すごくうれしいんだけど、今ちょっといろいろ取り込んでて…」
「え? 紹介したい人がいるってリボーンが言ってたけど…もしかしてその人と何かあった?」
「う、うん、まぁ」
視線を落とし、少し申し訳なさそうにするツナに獄寺は眉間にしわを寄せた。
「トラブルっスね、なんならオレがかたをつけますよ」
「私も、話ぐらいならできるだろうし…」
私たちがそういえば、助かったような顔してツナが口を開いた…その時、歴史は動いた!
ポロっと獄寺がスイカを落とす。スイカは玄関に落ちて割れる。
ツナは「あー! スイカ!」とそっちに驚いて。
私は私で目の前の見たことある人物に驚いていた。
「アナタは…ビアン「アネキ!!」…へ?」
廊下に立っていたのは、この前学校で話したビアンキさんとリボーンだった。
ビアンキさんはボール片手に獄寺の顔を見て「隼人」と呼んだ。
あ、獄寺の下の名前……だった。
「はがぁッ!!?」
どっえええぇええ!?
獄寺はそのプライドの高さからは考えられない膝のつきかたをして、お腹を押さえてた…。
だ、大丈夫か獄寺ァ!?
「失礼します!!」
「ちょっ…獄寺君!!」
そうして顔を真っ青にして獄寺はマッハ3の勢いで沢田家を跡に…あの子何がしたかったんだ!?
「いつもあーなのよ、変な子」
「アネキってことは、まさか…そんな、姉弟なの!?」
「そーだぞ、腹違いのな」
サラッと言ったけどリボーン、それってかなり複雑な家庭なんじゃないのか獄寺!
「とにかくツナ、獄寺を追いかけて来い」
「私も行こうか?」
「いーよ、はリボーンに用があってきたんだろ? 獄寺君はオレが見てくるよ。」
…ん、ツナ。ただ、ここにいたくないだけでしょ!?
「さて、紹介したい奴はコイツだぞ。つっても顔合わせは2度目だろーけどな」
「リボーンって何でも知ってる…ああそうか、学校の見えないところを好き勝手改築しちゃってたな、そーいや」
色んなところから現れてたもんね、リボーン。
「んじゃ、改めて…です。弟の獄寺とは、一応仲良くしてます」
「ビアンキよ。ほんと…貴女のママンに似てるのね、貴女」
そう言って私の髪に触れるビアンキさん。
「お母さん、知り合いだったんですか?」
「ええ。お世話になったもの…ちなみに、何度か会ってるのよ」
まじか。でも…私全然覚えてない! やだ、記憶力ぜんぜんないのかな…!
「ごめんなさい、覚えてないです」
「……ちょっとしか顔を合わせてなかったもの、仕方ないわ」
「ほんっと情けない頭でスイマセン…。そうだ、ビアンキさんから見てお母さんってどんな感じでしたか?」
「彼女はそう、天然で救いようの無く、無自覚で男を引っ掛けてきてしまう女性だったわ。
そのくせに、貴方の父親にゾッコンだったから、もう笑うしかなかったわね…」
あ、笑える話ですかそれ。
「お前にそっくりだな、」
「そうかな。少なくても男は引っ掛けてない」
「天然でゾッコンなとこは認めるんだな」
「う。だ、だって…雲雀さんに対してそうだから」
天然ってのも言われるし…でも、最近ツッコミしてるような。リボーンの行動に特に…。
まー私の記憶の中のお母さんはいつも、どこかのほほんとしてたような…。
何せ、服値札付けっぱなしとか後ろ前逆で着てたことあるし、
お風呂でよく転んでたし、どこかで電波受信してるのかな…とか思ったこともしばしば。
幼いながらに、お母さんの天然さには恐ろしさを感じたよ。
「とにかく、貴方も私のことは気軽に呼んでくれても構わないのよ」
「じゃービアンキ、って呼べばいいの? 外国の人ってそう呼ぶもんね」
「ええ、。それより…大丈夫なのね?」
…え?
「ビアンキ」
「リボーン? …なんでもないわ。気にしないで」
なんだったの? 今…ビアンキすごく切なそうな顔をしたような…。気のせい、かな?
「折角会いに来てくれたなら、今から作る料理食べていってちょうだい」
そういってビアンキはおくへと消えてった。
なんていうか…あなたここの住人じゃないですよね、居座ってるんですか!?
「ビアンキって、ああ見えてもマフィア繋がり、だよね?」
「そうだぞ。ビアンキはオレの愛人だ」
「あいじ…!」
「4番目のな」
順番なんて誰も聞いてないよ! 赤ん坊ながらにどれだけプボーイなのさ!!
あれか、無邪気な殺し屋に女はイチコロくわぁあ!!
「得意技は“ポイズンクッキング”だぞ」
「ポイズ…はい?」
「あいつの作る料理はほとんど毒入りになるんだ」
…やばい、獄寺じゃないけど…本気で腹痛くなってきた…!
「獄寺ってもしかしなくても、それの餌食になってたんじゃ…」
「ああ、お陰でトラウマみたいだぞ」
獄寺、激しく同情するよ…! 君はソレを喰らい続けてたんだね!!
さーどうやって断ろうと考えていると、私の携帯がなる。しかもこの着信音…雲雀さんだ!!
私はなってすぐに携帯をとり、息荒く出た
「はい! こちらの携帯ですよ!」
『君は電話に出る度に大声上げてるの?』
休日に雲雀さんの声が…! あー腹痛が治まっていくよ! 癒しだよ!
「雲雀さん、何してたんですか?」
『今、ちょっと立場をわきまえなかった草食動物を咬み殺したところだよ』
うわーその光景が目に浮かんじゃうよ…!
『それより、。学校にきてくれる?』
「いいですけど…どうしたんです?」
まさか…制服デート!? でも学校だからありえないか…。
『いいから来るんだよ、待ってるから』
「え、ちょっと!」
一方的に切ったー!! 本当に猟奇的なんだから…ステキですよ、雲雀さん。
「本当に母親にそっくりだな」
「む。雲雀さんの右腕(予定)だもん、そりゃ一途さ!
それより、私雲雀さんに呼び出されたから今からいかなくちゃいけないから…ビアンキに伝えておいて」
あと獄寺とツナにも!
言伝をリボーンに頼んで私は沢田家を後にした。
学校ってことは制服に着替えないと駄目だよね…一回家に帰らなきゃ!!
+
「リボーン、は帰ったの?」
「ああ、呼び出されたからな」
「ほんと…愛に真っ直ぐなのね、親子揃って」
「…そういやお前、会ってきたんだろアイツに」
「ええ」
「ジャッポーネに…に会いに来る様子はまるで無いか」
「…イタリアから出るつもりはない、そう貴方に伝えてと頼まれたわ」
「そうか。なら仕方ないな」
「それと、不穏な動きがあるそうよ。…近々ここにくるかもしれない」
「立場を分かっちゃいねぇやつらだな。はボンゴレだってことを分からせねぇとな」
+
溶けてしまいそうな夏の暑さ…シャワー浴びたのに、着替えたばっかの制服なのに、容赦なく私の体は汗で攻撃をしてくる。
くぅ、人間は何で汗が出るんだろ…汗腺詰めてやろうか!!
でもそれは病気になるからやめておこう、うん。
さて応接室の前に立っているんですが、今だ入る気が起きない。
だって、汗が…汗が凄いんだもん!
まぁ? 応接室はクーラーが効いてて涼しいだろうけど…さ。それでも乙女的にこの汗だけは許されない!!
ということで、汗が収まってきた頃、制汗剤でバッチリ抑えて…さぁ、出陣!
「失礼します、雲雀さん」
案の定ドアを開けた瞬間、涼しげな空気が私の体をじわじわと冷やしていく。
寒すぎず、暑すぎず、適度な温度。うん、気持ちいー…。
そんな涼しげな空気を満喫してると
「何やってるの、入ってくるなり」
雲雀さんのツッコミが飛んできた。
「いやー、ここは涼しいなぁと思いまして」
さっきまで外に居たから余計にそう感じるんですよ!
ツナの家だって玄関先だったから、蒸し暑さは残ってたし…。
「何の為の応接室だと思ってるの?」
「ひ、雲雀さんのための応接室ですね! にしても、ここは先生達は使わないんですか?」
「教師に用があるなら職員室に行くんだろうね。現に校長は、来賓を校長室でもてなしてるみたいだし」
あ、来賓にも容赦ないんですね雲雀さん!
「にしても…少し来るの遅かったね」
「へ? ああ、ちょっと人に呼ばれて出かけてたんですよ。それから雲雀さんの連絡が来たので、
マッハで家に帰ってシャワー浴びて着替えてきたのでちょっと遅くなりました…遅すぎましたか?」
「…ま、休日に呼んだ僕も悪いと思ってるから」
お、おおぅ!?
「あの、失礼ですが雲雀さん…何か悪いものでも食べましたか!?」
「は?」
「雲雀さんの口から“悪い”って初めて聞いたものですから…夏の暑さにやられましたか!?」
「、それかなり僕に失礼だよ。喧嘩売ってるの? 買ってもいいけど容赦はしないよ?」
喧嘩売ってるつもりは毛頭ございません!
レアな言葉が聞けたんで、私の心のアルバムにそっと留めて置きますね。
って、私は乙女か。恋する乙女か!
「用事は、よかったの?」
「はい、もう済みましたから。で、雲雀さん今日の用事は? あ、もしかして私と喧嘩します?」
笑いながら私がそういえば、雲雀さんは…どこか複雑そうな顔をした。
その顔を見た私は、何か触れちゃならないものに触れてしまったのかなと思ってしまった。
「ひ、雲雀さん?」
どうしちゃったんですか! やっぱ今日ちょっとおかしいですよ!
なんかすごく心配になってきたんですけど…あ、もしかして熱でもある!?
雲雀さんに近づいて
「失礼しますよー」
額にそっと手を当てた。あれ、熱くない…。
「熱じゃ、ないんですね…どうしたんですか、本当に…」
夏風邪でもひいたんですか!?
+
それは、いつも通りの言葉だった。
「私と喧嘩します?」
そう言われた。売られた喧嘩、買う気だったのに。僕はトンファーを出せなかった。
僕はどう答えればいいのか戸惑った。
「ひ、雲雀さん?」
いつも通り、『咬み殺す』って言えば戦える。彼女だってそれを望んだんじゃないの?
何で僕は動けなかった?
――それは、
こんな馬鹿な子を甚振るぐらい
―― の存在が
簡単だったはずなのに…。
――いつの間にか“当たり前”になったから?
答えは出ていた。
思い至ったその時、突如僕の額に触れた温もり。
「熱じゃ、ないんですね…どうしたんですか、本当に…」
そこに居たのは、僕の額に触れつつ心配そうに覗き込んでいるの顔。
そう、僕の顔が熱を帯びた瞬間だった。
「あれ、顔赤い…夏風邪ひいたんですか!? だったらクーラーの効きすぎた部屋は危険ですよ?」
見当違いだよ、。誰の所為だと思ってるの…。
「夏風邪なんてひいてないよ」
「え? だって顔…あれ、今は普通ですね」
「勝手に人を病人扱いしないでくれる?」
そう言いつつ僕はの手をそっと払う。
だけど、それは離さないで…彼女の手首を握ったまま。
「」
「なんですかー?」
微笑みつつ首を傾げるは、余りに無邪気で。
今なら言える気がした。僕がどうしたいのか。いいよね、約束を破るわけじゃない。
「君、風紀委員になる?」
そう、これだけのことを僕はずっと言いたかった。君を、傍においておきたい。それだけの理由で。
「え?」
案の定、はきょとんとしている。それは戸惑いとかじゃなく…驚きだと思う。
少しの沈黙のあと、
「いいんですか? 男子しか入れないんじゃ…」
と聞いてきた。
ああ、そこに視点がむいたんだ。僕の気にしてたところじゃないよ、というか君も気にしなよ…。
「僕を誰だと思ってるの?」
「天下無敵、唯我独尊の雲雀恭弥様です!」
「…へぇ、やっぱり喧嘩売ってるんだ?」
「い、いえ、滅相も無い! 褒め言葉のつもりで言ったんです!!」
唯我独尊って褒め言葉じゃないよ。ほんと馬鹿だね、。
呆れていると、はじーっと僕の顔を見てきた。なんだい、その顔。
「…何?」
「いえ、やっぱ今日の雲雀さん可笑しいです」
可笑しいのは君だよ、いつも言ってるけど。
「でも」
そうしてまた、笑う。
「そういう雲雀さんも好きですよ!」
……もう、冗談でも言わないでほしいよその言葉は。
「で、結局どっちなの? 入る、入らない?」
「いーえ、今よりもっと雲雀さんの傍に居られるのなら入らせていただきます! それに…」
――勝負しなくても傍に居られるのなら、私は嬉しいんですよ。
その言葉に僕は、なんとなく救われた気がした。同じようなことを思っていたんだ、も。
「いいの? 約束してたんだよ、これでも」
僕が気にしていること、苛立ちさえも
「いいんですよー! 形はどうであれ、傍に居られるのならば!」
君がただ笑えば
「それに、雲雀さんがそういうという事は…」
僕の世界は
「少しは認めてくれたってことで、なんか勝った気分がするんです!」
瞬く間に色を変えていった。
「まぁ、実際の勝負では勝てないと思うけどね。そういうことにしておいてあげる」
「あ、負けず嫌いですね雲雀さん…。もしかしてあれですか。
じゃんけんして負けた時に『5回勝負』とか言って延長戦に持ち込ませるタイプですか!」
「何そのタイプ、知らないし…じゃんけんで負けたことも無いよ」
「……(絶対、恐怖で相手を負かせてたんだ)ごめんなさい、想像したら阿鼻叫喚図でした」
「悲惨だね、君の想像力も」
嗚呼、何で僕はなんだろう。その答えだけはまだ分からないまま。
*翌日*
「あ、獄寺! どうしたの、顔真っ青だけど」
「アネキが10代目の家に居座ったんだ…2度と10代目のお宅には伺えねぇ」
「(そっか、ビアンキの顔を見ると腹痛になるんだったっけ、この人…情けな!)
ビアンキならさっき“ウナギを取ってくるわ”とかいって、自転車で出かけてったよ」
「ッ! 何でそれをもっと早く言わねぇ! 10代目〜〜〜〜!!!」
「え、何その変わり様!? 地獄から天国への逆走劇かよぅぅう!?」
獄寺は、ビアンキに弱く、10代目に溺れている…よね!?