Target19 家庭科実習=花嫁修業!?



今日も快晴、雲ひとつなく…暑い!!


「あっつー…獄寺もお疲れだねぇ…」


ちらっとお隣を見れば…この土日に疲れ果てた屍が突っ伏してた。


う、るへ…


あの入ファミリー試験で何かと焦げ目の付いた箇所は、獄寺が責任を持って直していたので先生にも雲雀さんにも何も言われずに済んだ。
休みの間にペンキと刷毛を持ってせっせとやってる獄寺の姿は……ププッ、想像できない!
ツナも「手伝うよ?」と言ってたんだけど、そこは獄寺のツナラバーが発動したので断ってた。
だからこうやって死んでるんだけどね、アーメン


「でも日焼けしなかったんだね、よかったじゃん」

「…今日は何もする気がおきねぇよ」

「あらあら、そんなこといって…。今日の5、6時間目は女子は家庭科実習なんだ。獄寺死んでると誰にももらえないよー?」


そう言うと「まじか」と獄寺は目を光らせてた。


「お前のよこせ」

「えーやだよ。私の雲雀さんに持ってくもん」


まぁ、貰ってくれないと思うけど、さ。


「どーせ相手されないのがオチだろ?」

「(図星!)グッ…だ、だとしても獄寺なんかにあげないー!」


意地でも雲雀さんに食べてもらいたいもん!!
えぇ、花嫁修業の成果を見てもらおうじゃないのさっ!(いつやってたんだ)


「大体獄寺の場合は、お昼ご飯が自分の分だけじゃ足りないからほしいんでしょ? だったら獄寺親衛隊にもらった方がたんまりもらえるよ?」

「親衛隊って…あのウゼェ奴らか! ケッ、誰がンなもん」

「少なくとも愛情はこもってると思うよ。うん、そりゃ濃厚な

「いるか!」


かわいそうに、今獄寺ファンの子の涙が見えたよ……


「おはよーちゃん、獄寺君」

「京子ちゃんおはよ!…あ、ツナも一緒だったんだ」


うっはーなになに? 2人で登校してきたの? やだ、ツナってばやるー…って。


「おはようございます、10代目!!」

「うん、おはよ…」


なんか疲れてないか? 嬉しくない訳無いのに…。


「ツナ、どうしたの?」


私がそう尋ねれば、首を横に振る。


「なんでもない、気にしないで…うん、俺も気にしない


なんか自己暗示してるけど、大丈夫かあの少年は。








さて…昼休みになって、早めに準備しようと京子ちゃんと花ちゃんと行こうとしたときだった。


ちゃんっ一緒に行こー?」

「うん、じゃあ一緒に行く『1−A 。大至急! 応接室に行くように!』―と思ったけどお呼び出しだわ」


その約束は果たされなかった…。先生…かなり必死ですね! 雲雀さんがそんなに恐ろしいんでしょうかね!?


「ごめん、なるべく早く行く!」

「…ったく、屍になって帰ってこないでよ?」

「準備はやっておくね? じゃあまた後で、ちゃん」


もう、このお呼び出しが日常と化してしまってるのか、2人はフツーの反応で、フツーに手を振った。
やっぱり…慣れって恐ろしいと思いマス。








「やぁ、


ドアを開ければ、素敵な笑顔の雲雀さんがトンファー振り回していたので、リアクションに困りました


……すいません、入りなおします

「何その反応。まるでまずいものに出くわしたような反応だね」

「開けた瞬間、死屍累々笑顔でトンファーな雲雀さんに遭遇して、
 私のシックスセンスが人生最初からやり直したほうが身のためだぜコノヤロウと喚きました」

訳分からないから


だってですね!
すぐそばに、風紀委員(リーゼントじゃない)が転がってるんですよ、ええ、3人!
その上に笑顔で立ってる雲雀さんは、鬼にしか見えない
あーもう、この上なく麗しい鬼ですけどね! 開けた瞬間、SMプは勘弁してほしかった…


「とにかく座りなよ」

「え、そこの屍の上ですか!?

「…座りたいなら座ってもいいけど、どうする?」

ここはあえて…。い、いや、そんなプはしたくないので椅子に座ります!」


私が座ったら、模擬女王様ごっこになっちゃいそうで怖い!

倒れていた彼らは、私のすぐ後に来たリーゼント風紀委員によってどこかへ連れて行かれた。
きっと、意識は既に三途の川を渡ってる最中かもしれないね…合掌。


「でも、風紀委員を滅多打ちとは、どうしたんですか?」

「彼ら自身が風紀を乱していたから準備運動がてらに僕が制裁を下しただけだよ」

「…じゅ、準備運動ってなんのです?」

「もちろん、君を咬み殺す為の」

「ワォ!」


思わず雲雀さんのリアクションをパクってしまいました。
いやいやいや、だって雲雀さん? さっき自分で座るように言ったじゃないですか!
それなのに咬み殺すって…どんだけゴーイングマイウェイなんですか、アナタ!

そんな雲雀さんが好きだ、コノヤロウ!!



「冗談だよ。ちょっとに聞きたいことがあってね」

「え、私に聞きたいことですか!? 何でも答えますよー…まぁ体重とスリーサイズは勘弁してくださいね?
 乙女の恥じらいというものがありますし、いろいろとガッカリするようなものでしかないので…
 あ! でも今日の下着の色ならバッチリ答えますよ。ヘイ、カモン!

そっちに恥じらいを持ちなよ…、変態かい、君」


変態だなんて言わないで下さいよ…雲雀さんは1回私の見てるから、もーいいのかと

何がいいんだ、何が


雲雀さんは「見苦しいものを見せられたんだよ、あの時は」と、乙女に言っちゃぁならないセリフを言った
くぅ…もし雲雀さん雲雀さんじゃなかったら顔面蹴飛ばしてたのに…なんで雲雀さんなんですか!?(何


はあのアパートで1人暮らししてるんだよね?」

「え、家族構成…。あーそっか、雲雀さんは私の情報を調べてるんでしたっけ。そうですよー。
 自立して1人暮らししてます。花嫁修業もバッチリなんで、今の内に予約しておきます?」


私の、お婿さんに…キャハv

そう言ったら容赦なくトンファーがMy鼻を掠めました


「ごめんなさい、おちゃめな冗談なんです」


と加えて言えば、まじでトンファーで私の頬を一発殴打。わぁ、ちょっとステキな仕打ちですね、雲雀さん!


「痛いです、そして強いです雲雀さんッ!」

「君のそのセリフだと、どうしてかな。こうされて喜んでいるように思えるよ

「やー分かります? 喜んでるんですよ、雲雀さんの強さにv


また、さっきの調子で言えば…スッとトンファーをかざす雲雀さん。
あー飛んでくるな…! と目を瞑って衝撃を待っていると…それはこない。ゆっくり目を開けば、トンファーは既にその手にない。

あれ、なんかちょっと顔が赤い…?


「…話の筋がずれてきてるんだけど…いい加減僕の話に戻していいかい?」


あ、完全スルーされた…! もしかしなくても怒って顔が赤かったのか!?


「これから、君のクラスは家庭科実習なんだってね」


雲雀さんって全クラスの日程記憶してるのかな…。


「はい。余ったご飯でおにぎりを握って、女に飢えたクラスの男子(一部を除く)に配ると言うイベント付きですが…。それが、1人暮らしと何の関係が?」

「1人暮らしってことは、炊事ぐらいはまともなはずだから。ということは家庭科実習ぐらい朝飯前だと思ってね」


なるほど、そりゃ炊事洗濯なんでもこーい! ですが…得意になったのは自立する為にがんばったからだったなぁ。
人間、必死になればなんでもできーる! そう、人間皆、死ぬ気の沢田綱吉の要素を持ってるんだ!(何かが違う)

雲雀さんはまぁ、私の状況を予想して言ったんだろう。…でもまだ、この話の意図が読めないぞ…雲雀さんは何でこの話を…。


「で、君はそのおにぎりを誰にあげるつもりなの?」


そう思ってると…雲雀さんはジッと私の目を見て言った。
まるで…いや、自惚れちゃいけないんだけど、この目はそう言うだろうと確信しているような目で。
なるほど、これが目的ですか? 雲雀さんってば…素直じゃないんですね!


とまぁいろいろ勝手な妄想をして、私はニッと笑った。


「獄寺が欲しいとか言ってましたけど…、私は雲雀さんに食べてほしいですよ、できれば!」


もちろん、「馬鹿なこといわないでよ」とか言われるんだろうなとも思ってた。
でも、返ってきたのは期待していた、自惚れていた答え。


「じゃあ持ってきてよ。僕は屋上にいるから」

「へ…」


まじで食べてくれるんですか!? さっきまで笑っていた私の顔から余裕はあっという間に消え去った。
予想外の返答に何か今、私の頭の中は沸騰しちゃってますよ!



「あの、雲雀さん」

「何? まさか今更、他のやつに渡すとか言う気?」

「い、いえ! そういう訳じゃなく…いいんですか、私ので?」

「…たまには普通のご飯を食べてみたいと思ったんだよ」


いつもこの人何食べてるのか激しく気になった。


「雲雀さんの昼ごはん…気になります…!」

「…普通だよ」

「普通ってなんですか、普通って」

「出前」

「うわ、雲雀さんだから許されるVIP待遇キタ!」



今度ご一緒したい、ええぜひとも!


「具は何がいいですか? シャケ? 梅もいいですよねぇ」

「なんでもいいよ」

「じゃー私のお好みってことで…作ってきますね!」



私はスキップしながら、家庭科室へと向かった。





「ってことで、花嫁修業な私なのですYO!

「わぁ〜よかったね! 花嫁修業ってすごいよ、ちゃん」

何がよくてすごいのよ、何が!



早速昨日のことを京子ちゃんたちに報告すると、
京子ちゃんは相変わらずのほほん、花ちゃんも相変わらずはっきりしていた。
いやー、いいツッコミありがとう!


「ほんっと頭可笑しいよは…なんで雲雀さんなのよ…殺されるわよ

「まー何度も殺されかけてるけど、生きてるからそれでヨシ! んでもってまだ生きていたいから、おいしいおにぎり作らなくちゃ!」

…おにぎりで失敗できるのは形ぐらいだから問題ないわよ


あーもう、花ちゃんったら呆れちゃってぇ……可愛いわ!

そんなこといいながら、私はお米を研いでセット完了。


ちゃん手際いいねー」

「そう? やっぱ1人で暮らすとなんでも自分でやらなくちゃいけないからね」


そういう京子ちゃんもかなり手際がいいんだよね。花ちゃんは……頑張れ!


「具はシャケと梅にしよーっと…それじゃ、ご飯炊き上がるまでお昼食べよ?」



ご飯食べて、片づけをしていると、炊き上がりをお知らせする音が聞こえた。
私たちはジャーからご飯を取り出した。うん、いい感じにふっくら!
ふふふ、私の水のはかり具合に間違いはなかった!(目盛り見てたから当たり前だ)


「京子ちゃんは誰に上げるの?」

「んー誰かは決めてないかな」

「だったらツナはどう? 喜んでくれると思うよ」

「それ私も思う、沢田にあげなよ」

「ツナ君、貰ってくれるかな」


そりゃ貰ってくれますって、アンタ。
京子ちゃん一筋で生きてきてますよ、あのお方は。もらったらハート乱舞……とまではいかなくても感激しちゃうだろうね!


「さて、と…それじゃあとんずらします!」

「雲雀さんのところでしょ? 気をつけてね」

「花ちゃん、毎回思うけど…私、戦争に行くんじゃないんだよ?


そうツッコミつつ、私は雲雀さんのところに急いだ。





「失礼します! 作りたてほやほやの私の愛たっぷり…あ、それを言うと食べてくれないか。とにかく、ちゃんお手製のおにぎりお持ちしましたっ」


屋上のドアを開ければ、雲雀さんは寝転がってた。
いいのかな、あの人授業サボってても…。うん、雲雀さんだからいいんだね!


「雲雀さん、起きてます?」

「起きてるよ。君の声で目が覚めた」


雲雀さんは気配に敏感だと言う。
それまで寝てたんだ…くぅ、気配消していれば寝顔を見れたかもしれないのにっ!! 惜しいことしたよ、自分!


「それで?」

「ん? ああおにぎりですね! えと梅とシャケの2種類です!
 花ちゃん曰く、失敗できるのは形ぐらいだって言ってたので味に問題はないと思います」

「ふーん…じゃあ、貰うよ」


そういって、手を合わせた。あ、『いただきます』をちゃんとするんだ!
それから手に取ったのは、梅のほうだ。


「…………どうですか?」

「…うん、まずくはない」

「それは雲雀語で美味しいととってもいいんでしょうか?」

「雲雀語って何? 好きに解釈しなよ」


よっし、ということはおいしいんだね!
続くシャケもちゃんと食べてくれて、「ごちそうさま」も言った。

雲雀さんってば礼儀正しいっ!



「でも…おにぎりは誰でも作れますもんねぇ」

「そうだね」

「これでも私、結構いろいろな料理作れるんですよ!」


私がそういえば、興味なさそうに相槌をうつ雲雀さん。
私は雲雀さんの興味を引くようなことを言いたかったのか、本音だったのか。まぁ、そのノリで、言ってみた。


「それで…もしよかったら、私雲雀さんにお弁当作ってきてもいいですか?」


そういったときの雲雀さんが、多分出会ってから一番驚いた顔をしてたのは間違いないと思う。
凄く目を見開いて「え?」って…。あれ、私何か変なこと言った?


「あの、雲雀さん?」

「何て言ったの、今」

「えと、雲雀さんのためにお弁当でも作ってきてもいいですか、と。あ、もしかして嫌ですか?」

「そうじゃないよ…ただ、」

「ただ…?」


雲雀さん?

雲雀さんは少し頬を赤らめて


「…君がそういうとは思ってなかったから、不意をつかれたんだよ」


そう言った。


おおぅ、雲雀さんに不意打ちを成功させてたんですか私!


すっごいね、私!

とかテンションあげて喜んでると、雲雀さんにめっちゃ盛大なため息をつかれました。え、なにゆえ!?


「どうかしました?」

「能天気」

「のーてんき?」

「君の事を言ったんだよ」


そういう雲雀さんの顔はもういつも通りで。…さっきの紅潮した顔の写メを…!


「むー…で、どうなんですか結局は」

「今度、作ってきてよ。食べてあげる」

「よーっし! あ、でも出前の物と比べないで下さいよー? 比較対象外指定です!」

「はいはい」


こうやって笑う私も、いつも通りなのかな。


「それと、


一瞬ざわっと風が強く吹いた。私の髪を巻きこんでいく。


「…君さ、………」


雲雀さんはじっと私の顔を見て、何か言おうと口を開いた。だけど……そこから言葉は紡がれない。
微妙な間が、なんか怖い。


「な、なんですかその間は。言いたいことはハッキリ言いましょう雲雀さん!」


私が言葉をはさむと、雲雀さんは口を閉じた。そして視線をそらした。

「なんでもない。僕はまだここにいるけど、君は教室に戻りなよ」

「? あ、はい……」


妙に歯切れが悪い…なんだったのかな?





さて、雲雀さんに言われたので、私も大人しく教室に戻ることに。その帰り道だった。


「あれ?」


私は、すっごくきれいな女の人を見かけた。この学校の先生にあんな人いたかな…?

ていうか、覗いてるのってうちの教室?


「あのー先生ですか?」

「!?」


ばっと振り返って私の顔を見ると、その人は目を見開いた。


「あなた…!」

「私を知ってるんですか? やっぱこの学校の先生…」

「…違うわ。私はビアンキ、…リボーンを取り戻す為に来たの」


へ? 取り戻すって…。なるほど! リボーンは家出してきたのか!
赤ん坊だもん、こんな若い人が母親でも可笑しくないか!


「ああリボーンのお母様?」

「恋人よ」

………


なんか、幻聴が聞こえたよ!! 恋人って…赤ん坊になんで大人の女性がー!?


「でも、10代目に邪魔されてしまったわ。それじゃ、またね」


そう言って私の肩を叩き、階段のほうへと歩いていった。

リボーンが関係してるなら…100%また会うよね、うん。
まー…細かいことは気にしないという事で、教室に入ろう!



そして教室に入ると、そこは戦跡でツナがパンツ一丁だったことに噴出したのは言うまでもない。







『君さ、風紀委員に入りなよ』


そう言おうとしてしまった。
だいたい、男しか入れないのも“女は弱い”と定義されているからであって、入っちゃいけないわけじゃない。
現には草壁を下している。実力は申し分ない。

あの自殺未遂事件以来、はますますあの草食動物と群れるようになってる。
僕の苛々も、どんどん抑えきれなくなってきてる。自分でも分かってるよ、それがなんでかぐらい。

が誰かに取られるのが嫌なんだ。

が誰かと笑ってるのが嫌なんだ。

…どうしてかまだ、分からないけど…僕の苛立ちを抑えるにはが傍にいればそれでいい。
だけど、僕はと『僕に勝ったら、傍に置く』そう約束した。
僕に勝ってない彼女に、風紀委員になって、なんて言える訳が無い。


じゃあ、どうすればいい? どうすれば、僕の苛々は納まるんだろう。


……」



分からない、僕はどうしたらいいんだ。