Target 17 獄寺隼人の疑心暗鬼



山本武自殺未遂事件は、冗談だったという事で済まされて、大事にならずにみんなの笑い話となった。
ひ、人が死に掛けたと言うのに笑い話にしていいものなのか…!?
それは、かなり謎だが…。


「ま、ツナとのお陰だな!」


本人はこの通りニコニコと笑っていらっしゃるので、気にしないでいよう、うん!


さてさて、リボーンの思惑通りツナと山本が仲良くなってめでたしめでたし!


「にしても、…あの時あんたもすごいところから出てきたわね。驚いたわ」

「ん? ああ、最初は下で待機して落ちたとき救出しようと思ってたんだー」


でもいても立っても居られなくて…つい。

そういう私に、花ちゃんはあきれ返っていた。え、なんで呆れるの!?


「ほんっと、『つい』でよじ登るの気持ちが分からないわよ」

「えー、人間必死になれば何でも出来るよ! ね、京子ちゃん?」

「そうだね、お兄ちゃんも『極限』になれば何でもできるって言ってるし…」


お兄さんって…ああ、ボクシング部の主将さん!
あの人「極限だー!!」って前叫んでたような…。

あれか、『アン●ニオ●木』さんみたいに、元気があれば…ってゆー精神?



「あんたのお兄さんは例外よ。ま、を普通の女子扱いってのも無理な話か」

「そうそう、普通だったらもう少しお淑やかさv」


淑女なんて私には似合わないしね。
それに、もし淑女だったら雲雀さんは相手なんてしてくれなかったと思う。
なんつーか、手加減はする……訳ないか!

どんなに弱くてもボコボコにするもんね! 私もトンファーで滅多打ちされてるし!


「最近どーしてもマゾッ気がある気がしてきてならないわ」

「マ…ちがーう! 私の周りにドSが多すぎるだけだってば! ねぇ京子ちゃん」

「でも、ちゃんってよく遊ばれてるよね。見てるのも面白いもん


…それって傍観して喜んでるんでしょうか京子ちゃん。
もしかしなくてもあなたもSですか? 隠れSだと認定してもよろしいですか!?


うわーん、心のオアシスの京子ちゃんまでがぁああ!

「ちょっと! それは私に失礼よ、私に!」


花ちゃんは根っからのSだもん

大人の男の前ではMを演じてみてもいいわよ。


そんなSM美学を語っていると、教室にツナと山本が入ってきた。
2人と目が合い、思い切り手をふりながら挨拶した。


「あ、ツナに山本だ、おはよー!」

「おはよ、

「よっ、今日も元気だな!」


元気100倍アンパ●マンですからね!


「きょ、京子ちゃん! おはよ!」

「おはよう、ツナ君」


ツナは大好きな京子ちゃんから挨拶を返してもらえて、もう気分上々なのか頬が赤い。
くー青春してるなツナぁ!! 羨ましいぞ!


「黒川もおはよう」

「…何このあからさまな温度差、沢田のくせに!」

「まーまー花ちゃん、何とかは盲目っていうでしょー? あれ、そーいえば獄寺は? 一緒じゃないの珍しいねー」


私が獄寺の姿を探していると、山本は笑いながら


「そういえば見てねーな…また遅刻かもなっ!」


とそういった。

あーもしかしなくても獄寺…嫉妬? ヤキモチ? 乙女か!?
まーったく、ツナに親友という名目のファミリーが出来て妬いてるんだなぁ…。
あれだけ10代目馬鹿なんだもん、分かる分かる!


「ツナー、獄寺放置するとやっかいだから気をつけてねー」

「何言ってんだよ…」

10代目依存症だから、何しでかすか分からないよー


ニコニコしながらそういうと、ツナは「ゲッ!」と何かを悟ったような顔をした。


うん、何が起こるんだろうねぇ…。


「山本も気をつけようね」

「ん?」

「獄寺の嫉妬の的だからさ」

「ハハハ、オレは獄寺を魅了しちまったのか?


そーじゃぬぇ。天然か? ん、君は天然なのかい、やまもっちゃん!




チャイムが鳴り、皆が各々の席につくぐらいに獄寺は教室に入ってきた。
みんながびくっとしたのは彼の存在のせいだけじゃない。そのオーラもだ。


「おーおー獄寺や、殺気立ってるねぇ」


もう殺る気満々vな殺気をぶちまけていらっしゃいます少年G
ずかずかと入ってきて、どさっと椅子に座る。んで足は机の上に乗せる。

…お母さんから習わなかったのかこいつ。


「うるせぇ…くそっ!」


その殺気の矛先は、やっぱり山本だった。


「男の嫉妬は見苦しいぞ」

「なっ、オレが嫉妬なんてする訳無いだろ!」

「あーやだやだ。まぁ素直じゃないのが獄寺だけどさ」

「何が言いたいんだよ、お前は!」


ツンデレって、いいんじゃないのかなってことを説いてたんだよ

ふざけんな、この腐れ女!





案の定、事件は起こった。
事件は教室で起きているんじゃない…現場で起きてるんだ!(何かが違う)

それは放課後、京子ちゃんも花ちゃんも委員会で居なくなって
ツナも獄寺もどこかに行ってしまってて、山本は「さー部活行くか!」と言ってて…。
私は私で「ああ暇だー、雲雀さんとこに行こうかなー、んであの細腰に抱きついてやる!
とか野望めいたことを思ってたら…奴はやってきた。




「山本ォォオ! テメェ今すぐそのアホヅラ貸しやがれェ!」




教室に飛び込んでくるなり、ケンカ腰で何かほざきましたG寺H人!


「よ、獄寺も一緒に野球やるか?」

んな呑気なこと言ってんじゃねぇ! いいからさっさと来やがれ!!」


そう言って山本の首根っこを引っつかんでずるずると連れて行こうとした。
おいおいおい! なんのリンチするつもりだね少年!

私は止めないといけないかなと思って獄寺の後についていく。


「ちょーっと獄寺! 山本を何処に連れてくの?」

「コイツがファミリーに認められたことがゆるせねぇんだ!」

「当の本人はふつーにツナの親友だとしか思ってないよ? ええ、マフィアだという考えは毛頭ない!」


引き摺られていても「なんだ、新しい遊びか?」と無邪気に笑ってるじゃあありませんか!
その顔を見たら獄寺が舌打ちして私に当たってきた。


「ハハッ、なんだ獄寺とで痴話喧嘩か?」

「してないから、山本」

「というか、そろそろ自分で歩けよテメェ!」

「いや、引き摺ったの獄寺でしょうよ!?」


こんなやりとりをしつつ、結局止めることは出来ず…外まで出てしまった。


「あーもう…山本、とんずらした方がいいよ!?」

「とんずら? ああ、鬼ごっこをしたかったのか獄寺は

「違うから、ちょっとその天然は治したほうがいいぞ野球少年ン!!


相変わらずな山本に、ありとあらゆる角度から睨めつけてる獄寺…。
さすがにその視線には山本も苦笑するしかないのか…


「おいおい獄寺。呼び出しといてだんまり睨めっこはねーんじゃねーの?」


とか、こりゃまた見当な違いことを言いおった…!
それがさらに獄寺の眉間のしわを増やしてるぞ、あーダイナマイト出すか…!?
イライラで震えてる獄寺を見た山本は、どこからか牛乳を取り出していた。


「おまえ牛乳飲むといいぜ。イライラはカルシウム不足だ」

「なんでそー呑気かな山本…、そんでもってどこから出したのその牛乳!

「ん? 昼休みに買った並盛3.8牛乳だけど、これがうめーんだよなー」

知らんッ! あと獄寺ー! 背中を向けていてもダイナマイトを構えようとしてるの丸分かりだからね!


私がそう言っても無視し、タバコをくわえて火をつけようとしたとき


「おーい!!」


我等がボスの声が聞こえた。
それが鶴の一声だったのか、獄寺はタバコとダイナマイトをさっと隠して
山本も牛乳をそっと鞄の中にしまった。(しまわんでも良かったんじゃ…)


「10代目!」

「よぉ」

「ツナッよく来てくれた」


これで一発触発はなくなりそうだ…!