Target16 山本武自殺(未遂)事件
さて、獄寺が転入してから…さらに並盛の風紀が乱れてると思うのですが、雲雀さん!
つい最近は、ツナが理科で26点をとってしまい、それを嘲笑うように言った先生に獄寺がブッチしました。
止めに入ろうと思ったけど、ツナには爽やかな笑顔を見せる獄寺に何もいえなかったよ…。
それから2人は「退学」の危機にさらされた。
あれ、ここって公立ですよね!? 退学なんて存在するんですか!?
そんなこと思ってたけど、銃声やら爆発音がしても平気なこの学校に、これ以上何も突っ込んじゃいけない気がした。
何はともあれ、15年前のタイムカプセルを見つけないと退学決定と言われてしまったツナたちだけど、そんなものはない事が発覚。
加えて特殊弾とレオンの力によって40年前のタイムカプセルが発掘されて
理科の教師の経歴詐称が発覚。彼は解雇されて、ツナと獄寺は退学せずに済んだ。
そして今…獄寺はダイナマイトを仕入れるためにどこかへ行ってしまい、私はと言うと…。
「ひっばりさーん!!」
風紀委員御用達、雲雀さん…『実はソコに住んでるんじゃないのか』という噂の応接室に足を運んでいた。
「…入るときはノックするなり挨拶するなりするよう草壁が注意してなかった?」
「私の挨拶は雲雀さんの名前を呼ぶことですよ〜!」
もー羞恥心なんて知らないですよ、ええ開き直ったは最強です☆
そりゃーまだあのお姫さま抱っこ事件は思い出すと「キャー!!」ってなるだろうけども
あれはいい思い出で、いい体験で、鼻血ものだと思えば楽しいもの!
オイスィ〜シチュエーションだったんだよ、うへへ(壊滅的にキモイと自分でも思う)
「そういえば君さ…最近、草食動物たちと群れてるみたいだね」
「え? あーツナや獄寺たちですか? それとも京子ちゃんと花ちゃんのことですか?」
「…正確には前者の方だよ」
どうも、雲雀さんもあの退学騒動のダイナマイトの爆発音と荒れたグラウンドの酷さには
ちょーっと不機嫌になったみたいで、ちょっと群れてた不良を秒殺してしまった。
群れてた君たちが悪いんだ、不良たちよ! いい加減学ぼう? 不良やるなら群れちゃぁ駄目だよ!
まー、ダイナマイトは獄寺だし、グラウンドを割ったのはツナだし…。
そんな人たちと一緒に居るんだから不機嫌にもなるかな。
「…まー彼らは雲雀さんとは違う仲間ってものです」
「へぇ、僕の目の前でいい度胸だね」
「やっだな雲雀さん。いつも言いますけど、嫉妬してるんですかぁ?」
「………してない、よ」
ありゃ、今日は返答に時間がかかってる…。
ハッ!? 呆れかえってなんと言おうか迷ってたのかな!?
「まぁまぁ! そんなむくれないで下さいよ!」
「ッ、誰がむくれてるの?」
「なんと言われようと、私の中では雲雀さんが1番ですって!」
キャッ言っちゃったv
なーんて乙女なこと言って見せるけど…雲雀さんは完全アウト。
何言ってるのと言ったご様子でそっぽを向いてしまった。
「雲雀さーん?」
「うるさい…。それより、なんだか屋上が騒がしいみたいだけど…あれのクラスの生徒じゃない?」
「え?」
そう言われて窓から覗き込めば…げ、飛び降りようとしてるのは私のクラスで有名な山本君だ!
と言っても喋ったのはほんの数回なんだけど…。
クラスの机に白い花が置かれるのはやだよ!? うぎゃー!
「学校で死なれると風紀が乱れるから、どうにかしてきてくれる?」
「それのために呼び出したのならは早く言ってくださいよー!」
私は飛び出すように教室を出た。
+
「…」
僕はの居なくなったこの場所に1人残された。
とはいえど、いつも1人だから何とも思わないんだけどね。
…最近、自分が可笑しく感じる。、彼女のせいで僕は一喜一憂させられる。
僕のことを好き(恋愛感情はないらしいが)と言っておきながら、
僕じゃなくて沢田綱吉や、ほかの草食動物たちに興味があるのか一緒に行動している。
それを見ると、僕もイライラしてきて、たまたま目に入った不良を咬み殺した。
まぁ、あれは群れていたから悪いんだよ。僕は群れるのが嫌いなんだ。
そんなイライラも、が僕の名を呼ぶだけで収まった。可笑しなものだよね。
今日は特に可笑しいよ。の「嫉妬してる?」といういつもの冗談に答えを渋った。
思わず「そうだよ」なんていいそうになった自分が馬鹿らしくなった。
自分で自分が分からないなんて、この上なく…愚かしいよ。
「…君は僕の獲物なんだ」
でもなぜだろう。を咬み殺したくは、ない。群れるのが好きなくせに。
…楽しみがなくなるからかな。この学校に、以上に強いやつなんて居ないからね。
きっとそうだよ。僕の楽しみのために殺さないだけだ。
「…ふぅ」
僕はもう一度屋上を見た。はアレに間に合ったのかな。
あ、今まさに飛び降りそうだ…。よく見れば、沢田綱吉も見える。
…ほんと、死なれたら困るよ。風紀は乱さないでよね。
アイツ助けたら、も一緒に居るんだろうな。
僕には関係ない、関係ないんだ…なのに、どうしてかな。
それを想像して、苛々してる僕が居た。僕は群れるのが嫌いなくせに。
+
「たけしィィ! 死んだらだめぇええ!!」
「そうだぞ山本! お前まだ生まれて12、3年だぜ!?」
なんとか…間に合ったっか!!
私は屋上には行かず、その下の階で待機していた。
もし落ちても、レイピアで服を狙って落ちるのを防げばいいや!!
んで服が破れる前に救出…うんバッチリ☆
…って出来る訳がないので頑張ってとめてくれ皆の衆! 決して私は薄情なんかじゃないんだよ!
クラスメイトを思って下で待ってるんだからねー!!
山本君…死んじゃだめだからね!
「野球の神さんに見捨てられたオレにはなーんも残ってないんでね」
「まさか…本気!?」
いつも明るく、クラスの中心だった山本君が…こんなにも卑屈になるなんて…!
ツナ、とめて…死なせちゃダメだ!
彼は生きなきゃいけない人じゃない!!
「うわぁぁああ!」
って…ツナの、声?
窓から身を乗り出して(危ない)見上げたら、山本君が誰かと対峙してる。
山本君は右腕を怪我してるみたいだ…。
「ツナ…」
山本君がツナを呼んだ。やっぱり!
「止めに来たならムダだぜ。おまえなら俺の気持ちが分かるはずだ」
「え?」
「ダメツナって呼ばれてるお前なら、何やっても上手くいかなくて、死んじまったほーがマシだって気持ち分かるだろ?」
そっか、彼にとっては…野球が全てだったんだ。それを怪我して、絶望…?
…情けない、情けないぞ! 怪我が何だ! 怪我なんて治るんだ!
「いや…山本とオレは違うから…」
「さすが最近活躍目覚しいツナ様だぜ! オレと違って優等生ってわけだ!」
どこまで卑屈になっちゃってるのこの人ー!!
あーもう、埒が明かないでしょうよ…死なせたらダメなのに!
私は窓に足を掛けて、上の飛び出た部分に手を掛けよじ登る。
うひゃー高ッ…こんなところから飛び降りようなんてよく考えたなぁ山本君!
「山本くーん…ツナー」
「え…の声…ってなんでそんなとこから出てきてんのー!?」
私はヒョイッと山本君の隣に着地した。
みんなが「え!?」と口をそろえて突っ込みを入れたけど…気にしない!
「まぁ、雲雀さんと話し込んでたら君たちが見えて…それで、何で死ぬの?」
「…お前にはわからねぇさ。オレがどれだけ野球に必死になってたかなんてよ」
「うん、分からん!」
「ハッキリ答えたー!?」
でもね…、でも。
「それでも、残された人の気持ちは分かるよ」
「?」
「山本君はお父さんが居るんじゃなかった? 悲しむよ、君を育てた父親だもん。
私、お母さんもお父さんもいないから、残された側の人間だから。その痛みぐらい、ちゃんと分かってるつもり」
「…」
「なんていうかさ、怪我は治るよ?
でも、心に負った傷ってのは…治りにくいの。ツナ、ツナからも何か言ってあげて?」
私がツナにふれば、ツナはうんと頷いて山本君の顔を見た。
「ダメなやつだから山本と違うんだよ。オレ、山本みたいに何かに一生懸命打ち込んだことないんだ…。
『努力』とか調子のいいこと言ったけど本当は何もしてないんだ」
…ツナ…そんなこと言ったのかー。努力、か。ツナだって努力してるよ。
どうやってリボーンの命懸けないたずらから逃げるのかーとか、
忠犬獄寺の笑顔という名の恐怖から抜け出す方法を模索するとか。
…そうそう! パンツ一丁になった時にどうやって着替えようか必至に考えてるし!
って場違いな考えは置いといてー!!
「むしろ死ぬ時になって後悔しちまうような情けないやつなんだ……。
どーせ死ぬんだったら死ぬ気になってやっておけばよかったって、こんなとこで死ぬのもったいないって」
だから、死ぬ気弾を撃たれたツナは、あんなにすごい力を発揮するんだね。
『死ぬ気でやっていれば』って後悔が…ツナにはあるんだ。
ツナの強さは、後悔できるところにあるんだ。
そしてそれを…こうやって誰かに伝えるところにもあるんだね。
「だってさ、山本君…死んだらダメ、早まっちゃダメ」
「そういうことだよ…じゃ!!」
ツナは恥ずかしかったのかそこから脱兎の如く逃げようとする。
そんなツナと、
「まてよ、ツナ」
彼を呼び止めようと服を掴まえた山本君が落ちるのは…お約束ですか?
「うわぁああああ!!」
「ぎゃぁああああ!!」
2人は叫び声をあげて落ちていく!!
こんなとこからレイピアを突き出したって意味ないし…あああ!!
だめだッ、こんな時は…ツナが死ぬ気にならなきゃ助からないッ!
お願い、リボーン!!
「ツナ!! 山本君!!」
私が叫んだと同時に…
ドキューン!!
あの銃声が聞こえて…ツナの死ぬ気タイムが始まった!
「死ぬ気で山本を助ける!!」
「うっし、ナイスタイミングだよリボーン!! いっけぇツナァアア!!!」
壁を走って山本君を“姫抱き”しているツナ。
うぉおお、オイシイシチュエーション!? ってそれでも止まらない2人…。
そこからまた銃声が響いて、ツナの頭に何か生えた。 ありゃ…毛で出来たバネ?
2人は無事に…地面に着地した…。よかった、やっぱリボーンが居てくれた!
「ちゃん!」
京子ちゃんが心配そうに私を見ていた。
そっか、私こんなところに立ってるから…。
「ごめん、心配かけた?」
「ううん、無事ならいいよ? でも、さすがツナ君…ちゃんだね」
「?」
私は安全なところに移動しつつ京子ちゃんの話を聞く。
「友達のためにあんなに必死になる人ってカッコイイね」
今のセリフ、ツナに聞かせたかった!!
というか、私今まさに京子ちゃんに惚れそうだよ!!
「京子ちゃんッ」
私は京子ちゃんに思わず抱きついてしまった。
「ど、どうしたの」
「もー京子ちゃんのそういうとこ好き! ちゃんと人を認められるのってそうそう出来ることじゃないよ!」
「そ、そうかなー?」
「そうだよ、ほんっと好き!」
私は笑いながら京子ちゃんから離れた。
京子ちゃんの顔も若干火照ってる…、かわいいんだから、もう!
「ふふっ、じゃ! 私はツナと山本君を見てくるね」
「あ、うん、行ってらっしゃい!!」
+
下まで降りると、2人は和やかな雰囲気で話していた。
上では「演技」だの「ジョーク」だの言ってるから、気にすることは何もないけど。
「ちゃおっス、」
「リボーン、よかった! 死ぬ気弾撃ってくれることを信じてたよ」
「オレはマフィアだからな。チャンスはいつでも逃さねぇぞ」
さっすがマフィア坊〜!
「おっ、! お前もありがとなッ」
ニカッと笑ってそういう山本君にほっと息をついた。
「もー馬鹿なこといっちゃだめだよ、山本君。
山本君はクラスのムードメーカなんだから、いなくなったら暗雲が立ち込めるよ」
「それをいったらはこの学校の救世主って呼ばれてるんだろ?」
「…それはやだよ」
救世主って…勝手に言われてるだけなんだからね…。
だいたい、私は雲雀さんの傍にいたいからあの人とケンカするだけであって
私が勝ったら、雲雀さんの傍に居るから勢力が拡大するんだよ? 分かってるのかな。
むーと私が唸ってると、山本君は、ん? と首を傾けてた。
「…まーいっか。ツナもお疲れ、あーこれ、脱皮した制服」
「脱皮とか言うなよ…。でもありがと」
「いーえいえ! 山本君を救えてよかったね!」
「うんっ!」
ツナは嬉しそうに頷くと制服に着替え始めた。
「そーいえば、さ」
「ん?」
「オレ、とまともに話すの初めてだな」
「それもそうだね」
山本君はいつも誰かの中心にいたから、私は遠巻きに見てただけ。
それに…まさか、ツナと仲良くなってるとは思わなかったし!
「もこれからよろしくなっ!」
「うん、よろしくね山本君っ」
「その、君付けはやめろって…なんか慣れねぇからさ」
「…獄寺と同じことを言うんだねぇ…じゃ、山本でいいの?」
「おー…それと、ワリィな!」
山本は手を顔の前に合わせて申し訳無いという顔をした。
「ど、どーした急に!」
「オレのこと何も知らず…」
「ああ、両親のこと? 気にしてないからいいよー」
お父さんは顔を見る前に居なくなっちゃってるから実感沸かないし、
お母さんも病気だったんだから仕方ないしね!
「それよか目の前の山本が死ななくてよかったよ」
「…とツナのお陰、だなっ」
こうして、山本とも仲良くなれました。…また雲雀さんは拗ねるかもねぇ。
「リボーン、嬉しそうだね」
「また新しいファミリーができたからな」
「(山本はやっぱファミリーだったか!?)」