Target14 転入生
…結局眠れなかった…!
寝不足で目の下にクマができてるかも…あーどうしよう、こんな顔で学校?
とかいいつつ、雲雀さんとやりあった傷の方が酷いけどさ…。そう、雲雀…さん。
「あんぎゃー!!」
そーだよ、雲雀さんだよ! あの不意打ち…お、お姫さま抱っこにはやられた…!
私は雲雀さんの獲物だからって…あれはないっすよ!
加えてバイクで送ってくれたし…。ふらつく私の腕をとって、部屋まで送ってくれたし…!
大家さんがニヤニヤした顔で私見てたしー!!
母さん、私…とんでもない人の傍に居たいって思ってるんでしょうか!?
「ハッ、こうしてる暇はない!」
ボーっとしてたら遅刻するー!
「いってきます!」
私は誰からも返事が返ってこない部屋にそう言って飛び出た。
「京子ちゃん、花ちゃん、おはよ!」
「おはよ」
「おはよー、ちゃん。今日は遅かったね、遅刻かと思っちゃった!」
「さすがに、遅刻は、したくないよ…」
息を整えつつ、私は自分の席に座った。見渡せば…あ、ツナもちゃんと来てるー。
私の視線を感じたのか、ツナと目が合って私は手を振った。
ツナはなんかオドオドしながら振り返してくれた。
あ、そっか! ツナは京子ちゃんが好きだったっけ!
「京子ちゃん、ツナに手を振ってあげて!」
「え、ツナくん? うん」
案の定、ツナは顔を真っ赤にしてるじゃないか!
あー…いいね、恋ってのは純情で!
「、いつ沢田と仲良くなったの?」
「昨日の球技大会の後かなー」
「へぇ…。あ、そうだ。アンタ昨日雲雀さんに呼び出されてたのに…どうなったのよ。
顔に傷もあるし…腕も擦り傷多い。またケンカしたとか言わないでしょうねー?」
あ、それ今の私には禁句なのに!
「へ、あ…うん、ケンカは…した、よ」
「…なんか歯切れが悪いわね…」
普通なら放って置かれるはずなのに、姫抱きされたあげくバイクで送ってもらったなんて
死んでもいえない! というより言っても誰も信じてくれないでしょうよ!
「もうこの先は私だけのヒ・ミ・ツ、キャハv」
「キモチワル…」
「何かいいことあったみたいだね」
そりゃまぁ、いいことだよ。
でも免疫ついてないから、しばらく雲雀さんに会うたびにドキドキしちゃいそうだよ!
「おらー席につけ!」
担任が教室に入ってきて、みんなが慌しく席につく。
「そういえば今日は転入生が来るんだって」
京子ちゃんの言葉に私は首を傾げた。
そういえば…私の隣の席が空いてるじゃないか、ええ不自然にも!!
「ちゃんの隣に座るのかな」
「どんな人が来るかなー、女の子かな、男の子かな?」
勝手な妄想を繰り広げる私たちを他所に、教室にその転入生は入ってきた。
…瞬時に、女の子たちがざわめきはじめた。
あー…カッコイイわな、あの顔は。
入ってきたのは銀髪のちょいと目つきの悪い男の子。
あーチョイ悪か、もしかしなくても不良かな?…大丈夫、不良は怖くない!
雲雀さんを相手に出来てるから怖くないのさ!!
「えー転入生を紹介するぞ。イタリアに留学していた獄寺隼人君だ」
ほぇーイタリア…。
あれ? たしかリボーンもイタリアから来たんだったなーボンゴレの本家もソコだって。
やだ、イタリア関係が私の傍にはいっぱいってことは…いつかイタリア行けるかな!?(無理だろ)
帰国子女、ルックスの良さから、さらに女の子は騒ぐ。
…ふ、私は大丈夫!
雲雀さんしか眼中にございません!! えぇ、雲雀さんしか!
そう思いつつ獄寺君を見てみると…彼はある一点を睨みつけていた。
…あの方向は、ツナ!?
ツナもその視線に痛さを感じたのかビクついている。
獄寺君は担任の席の案内も無視してズンズンとツナの方へ向かい…
思い切り机を蹴り上げていた。
い、痛くないのかな…机に足をぶつけて…! ってそこじゃない!
なんでツナ!?
男子はゲッソリ、女子はウットリな状況を一瞬で作り出してしまった…!
獄寺君はその後何もせずに私の隣の席に座った。
「……」
「ねぇ、獄寺君って不良だったの?」
「喋りかけんじゃねぇ」
…やーん、思った以上の強敵だわンv……キモッ! 自分でやっておいてキモッ!
「…ツナが何したって言うの?」
「うるせぇ」
「くっ…とんだじゃじゃ馬が転入してきたもんだぜ!」
「うるせぇって言ったのが聞こえなかったのかよ!」
獄寺君は私に手を振り上げた。
それを瞬時に判断した私はその手を奪い取り、彼を静かに座らせた。
私の行動に彼は目を見開くけど、すぐに機嫌悪そうに手を引っ張った。
大声を上げた獄寺君に、先生も周りもびっくりしていたみたいだけど
私は「なんでもないです」と笑っておいた。
「…喋りかけたことは謝るけど、空気読もうか」
「テメェが言える口かよ…!」
んー…手ごわいな、彼は。
HRが終わって、即行教室を出て行った獄寺君を追いかけてみた。
するとツナも同じく出てきたみたいで、声を掛けた。
「ツナ〜」
「! 転入生と揉めてたみたいだけど、なんだった?」
「仲良くなろうかと思って頑張ったけど、失敗失敗♪」
明るくそういえば、顔を真っ青にしているツナ。
「勇気あるね…」
「伊達に雲雀さんとやり合ってないよ?」
そりゃそうだよなー。
ツナは冷や汗をかきながらそういった。
やっぱ雲雀さんは最強だからねー…そりゃ、いろんな意味で…。
あーだめだ! 昨日のことを思い出すとまた顔が!
「だーーー!!!」
「! 前、前ッ!」
ドスッ
「おーいて」
…あ、人にぶつかっちゃったよ…。
「ごめんなさい…って、ツナ! 何ゆえ逃げるー!!」
ツナは真っ先にどこかへ行ってしまった。
「骨折しちゃった……あ、アンタは…!」
…あれ、どこかで見た顔だと思ったら…!
「あ、新入生ボコってたけど、雲雀さんにコテンパンにされた陰の薄い不良さんたち?」
「「「(言い方がひでぇ!)」」」
やっぱそうだったみたいなのか、何ともいえない顔をしている。
あの時雲雀さんのトンファーで殴られた頭は治ってるみたいで良かったー!
あれ喰らってたら頭骸骨はパックリ、ボロボロだっただろうなぁ。
「まだ1年生いびりでもやってるんですか? 性懲りもなく…雲雀さんに咬み殺されますよ?」
私が呆れながらそう言えば、彼らは首を命一杯横に振っている。
「ち、違ぇよ…。アンタ、救世主なんだろ? 雲雀を何とかしてくれよ…」
「無理ですね。私が雲雀さんを倒したからと言って、あの人がそうやすやす並盛を手放すとは思えません」
ま、潔く諦めましょうよ!
私は親指おったててそう言うと、さらに顔が真っ青になってる不良さんたち。
安全なところがほしいなら、すぐに転校することをオススメしますよ☆
「じゃあ、私ツナを追いかけるので…」
さよなら〜。
そう言って、ツナが消えた方向へと足を進めていった。
さて、ツナはいずこ? もしかしてあの転入生と鉢合わせしてたりしてー☆
「オレはお前を認めねぇ。10代目にふさわしいのはこのオレだ!!」
「な!」
鉢合わせとるー!! もしかしてが現実になっちゃってるよ!!
しかも結構な修羅場じゃないのか!?
私は声のする中庭に駆け込んだ。
「なんなんだよ急に? そ…そんなこと言われたって…」
「ツナは10代目だよ。ツナ以外が10代目だったらボンゴレなんて入らなかったよ」
「!」
私の声にツナは助けを求めるような顔をしてきた。
うぅ。ツナよ、そんな哀れんだ顔をしても私には状況が分からないのでどうしようもないよ!
対する転入生、獄寺隼人はタバコを咥えていらっしゃる。
あーもう、ここはやっぱ無法地帯と化してるわ。私もだけどね☆
「? …お前がか」
獄寺君は私の名前を知っていたのか、フルネームで呼ぶ。
…うん、名乗ってないよね? 何で知ってるんだろ…。
まぁいいや、どうせ噂とかで知ったんでしょ!
「まぁいい、貴様らのような軟弱な奴らは目障りだ。ここで果てろ」
そういいながら手に持ったのは…
「んなぁ!? バ! 爆弾!?」
ダイナマイト!? 初めて 生で見たよッ!
感動してる場合じゃない! 導火線にあのタバコで火をつけてるし!!
「あばよ」
ポイッとツナの方に放り投げやがったー!! んなアホなー!!
私はポケットから月凪を出すけど…間に合わない!
ツナの叫び声が聞こえたけれど……爆弾は、何かによって消火された。
「ちっ」
舌打ちが聞こえて…いや、その前に銃声が聞こえたような。あ、銃声といったら。
「リボーン?」
「ちゃおっス」
やっぱり、窓のところに座っているのはスーパーベイビー、リボーン!
銃を構えていつもの表情でいるじゃないか。
「思ったより早かったな、獄寺隼人」
…ん?
「ええ? 知り合いなの?」
ツナのそんな問いにリボーンは肯定した。
「ああ。オレがイタリアから呼んだファミリーの一員だ」
「じゃあこいつ、マフィアなのか!?」
「おわー…生のマフィアの少年か…」
どうりでダイナマイト持ってるわけだ。マフィアならありえる!
しかもボンゴレってことで、私の名前を知っててもおかしくはない、か。
どうやらリボーンも今日が初めての対面らしい。
「あんたが9代目が最も信頼する殺し屋、リボーンか」
…そんなすごい奴だったのか!?
やっぱスーパーベイビーはどこでも重宝されるよね!
もうギネスだよ、国宝級だよ、世界遺産だよ!
すごいなーなんて思ってると
「沢田を殺ればオレが10代目内定だというのは本当だろうな」
「「はぁ!?」」
私とツナの声が重なった。
どういうことぉー!!