Target10 10代目はダメツナ!



教室に入ると凄く騒がしかった。


「ダメツナが笹川京子に電撃告白してフられたぞ!」

「しかも持田先輩に決闘を申し込まれてるしな!」

「こいつは朝っぱらから面白くなりそーだ!」


朝からこの人の名前を聞かされた私って…一体…!
しかも告白? 京子ちゃんに?


「おはよ、京子ちゃん」

ちゃん…ごめんね、騒がしくて」

「ううん、でも何があったの?」

「私が話すわよ」


後ろから花ちゃんがやってきて、事の説明をした。

どうも、昨日の帰宅中の京子ちゃんに沢田君がパンツ一丁で熱血告白したあげく、フラれたらしい
そ、そりゃ、パンツ一丁は…ないわ。あれだよ、わいせつ物陳列罪?


私は沢田君を見る。あれが、あのスーパーベイビーの育てるボス、か。


うわー見えないよ。絶対見えない!
どー考えても、人を殺したり傷つけたりするの無理でしょ!
周りの男子の方がよっぽどそう見えるよ…。ああもう、リボーンの所為で頭おかしくなる!


「で、持田センパイ、昨日京子がうけた侮辱を晴らすため勝負するんだって」

「え?」


この話を今聞かされたみたいで、京子ちゃんは結構驚いてる。
しかも、持田先輩って…剣道部の人じゃん! 剣道勝負とかだったら負けるぞ!

教室の中を見渡しても沢田君がいない。剣道部の人に拉致られたみたい…。


「『京子を泣かせた奴は許さん』だってー」

「え、持田先輩は委員会が一緒なだけで…」


それに泣いてない!

命一杯否定する京子ちゃんが…かわいいです! ごちそうさま! あー…とりあえず、


「京子ちゃん、花ちゃん、勝負…見に行こっか」


そうするのが早いよ、この頭のもやもや払うのは。



で。



「雲雀さん、なんでここに?」



体育館に行けば、たくさんの人がいたけれど…ある一点から半径5mはスッポリあいていた
案の定、行ってみれば愛しの雲雀さんだったのです。
私は京子ちゃんと花ちゃんに断りを入れて、領域に入り込んだわけで。


「風紀を乱す輩が居たら咬み殺そうと思って」

「すでに風紀乱してますよこの騒ぎは…。でも、楽しみな一戦です」

「何が?」

「いえ! 個人的なことですのでー」


もしかして、気になります?

ならないよ、別に。


つ、つれないぜ雲雀さんっ! そう思ってると体育館のドアが開けられ
がたがた震えている沢田君が剣道部員に連れられてきた。
沢田君はそのまま無理やり持田先輩の前まで進まされた…ああ、混乱してるって顔だよ!


「持田先輩…好きな子にいいとこ見せるつもりなんですかね」

「草食動物がよくやることだよ。頭が悪いからね、奴ら」

「雲雀さんから見たら皆そうでしょうけども、持田先輩とじゃぁ勝負にならないですよね;」


かわいそうに…なんで、パンツ一丁で告白したんだい、沢田君やい!


体育館には、持田先輩の妙に芝居がかった大声が響き渡ってる。


「きやがったな変態ストーカーめ!! お前のようなこの世のクズは神が見逃そうがこの持田が許さん!!」


成敗してやる!

…うん、なんかすごい! あの人剣道部じゃなくて、演劇部でもいけるんじゃないのかな!?
一方の沢田君は、情けない声をあげている。


「そんなぁ」

「心配するな。貴様のようなドアホでもわかる簡単な勝負だ」


ニヤリと口を歪ませた持田先輩は、勝負内容を言った。


「貴様は剣道初心者。そこで10分間に一本でもオレからとれば貴様の勝ち!
 できなければ俺の勝ちとする! 商品は勿論…笹川京子だ!」


その声が聞こえて、私ははっとなった。


「しょ、商品!?


いつも温厚な京子ちゃんでも、さすがにムッと来たみたいで抗議の声を上げている。
5m向こうにいる花ちゃんが「最低の男ね」と言っているが聞こえた。

商品ってことは…勝ったら京子ちゃんを彼女にするってこと?
けっ、デリカシーの欠片もない発言する貴方に京子ちゃんはもったいない!
だったら私が貰う!(ここで張り合った!)


というか…沢田君、居なくないか?


聞けばトイレに行ってしまったという。
なんかまえ、小耳に挟んだんだけど…沢田君はトイレ逃走が多いらしい。


「逃げたのかな…沢田君」

「普通なら逃げ出すよ。勝ち目がないんだから」


逃げたことを聞いた持田先輩は「不戦勝だ! 京子はオレのものー!」と、ゲスなことを叫んでいた…
あんな先輩は、正直嫌だー!


この展開に、面白みがなくなった人が帰り始める。
同じクラスの子も、「まーこうなるかもって分かってたし」とぼやいてる。

でも…私は。


は帰らないのかい?」


雲雀さんがそう尋ねてきたのに、私は縦に頷いた。


「なんとなくですが、戻ってくるような…気がしたんです」

「…そう」


多分、リボーンの言ってたことが私の中には引っかかるんだ。
沢田君には“ボス”としての才能が少なからずあるってことなんだから…。


「そういう雲雀さんも帰らないんですか?」

「まだ人が残ってるからね」


ああ、取り締まる為にですか…


あー、信じて待つってなかなか辛いんだよー! 早く来い沢田君やーい!
周りの空気も、もうお開きといったムードになってたその時!



「いざ! 勝負!!」



そう言って、飛び込んできたのは……


「ぅおおおおおぉお!!!」


パンツ一丁の沢田君だ!!!!


「な、なー!!


あの…風紀が乱れてます、雲雀さん!


「ぱ、パパパンツ一丁でぇ!? 雲雀さんアレっていいんですか!?」

「君だって僕に見せてたでしょ」

「ウッ…あれは不可抗力です! これは…見せてるじゃないですかー!


パンツですよ! あーそうか、雲雀さんはアレを水着としてみてるんですね!
眼中にないんですね? さっすが雲雀さん! 私もそうします! そう思い込ませてください!


ギャハハハ! 裸で向かってくるとは、ブァカの極みだな!!」


散れ! と意気込んだ声と同時に沢田君に振り下ろされた竹刀はもろに頭に当たる。
だけど、それを物ともしないで頭で押し返してる!


竹刀は壊れ、持田先輩は吹き飛ばされた!


「…なんなの、あんなのダメツナって呼ばれてる沢田君じゃないっ!」


沢田君は馬乗りになり、手を振り上げた。アレは手刀…!?

そう思った矢先、いつの間にか手に掲げられていたのは…一束の髪の毛。
あれは…持田先輩の? みんな唖然として、どよめいている。


「百本!!とったーっ!」


あの…持田先輩のデコが局部的なハゲになってます

まわりもそんな沢田君に一気に沸いた!


「考えたなツナの奴!」

「確かに何を一本とるかは言ってなかったもんな」


とんちなのか、それー!!!


これでどうだと言わんばかりに髪の毛を見せ付ける沢田君に、審判も判断に困惑。旗を揚げるのを渋っていると


「ちっくしょ〜っ! うおおおおお!!


奴は激しさを増しました!
持田先輩の髪の毛がドンドンむしりとられていき、全部取られてそれを見せ付ける沢田君に


審判は素早く旗を揚げた。

…持田先輩のふさふさだった髪の毛は、肌色一色、ツルツルピッカーン☆だった…。南無阿弥陀仏。


この勝負…沢田君が勝った…? 格好はどうであれ…勝ったんだ。


「これが、リボーンの…」


教え子の、力なの?

皆が騒ぎたてて、いつの間にかヒーローとなった沢田君。
私はその姿を見続けていた。


?」


雲雀さんが話し掛けていることも…気付かないで、夢中に。
だって、ダメツナと言われている彼が…勝てるわけなんてない。

なのに、突然人が変わったように…。うーん…ちょっと、ボンゴレが気になってきた、かも。


……、聞いてる?」

「え…あぁ! ごめんなさい!」


やっと反応した私に、少し不機嫌そうな雲雀さん。


「そんなにあの草食動物が気になるの?」

「いえ、興味はあるんですが…。あれ、嫉妬ですか〜?」


冗談でそういえば、


違うから


スッパリと斬られてしまった。うう、かわいい冗談ですよ、雲雀さん!

でも、なんだろう…。
この学校に入って、気になるものが一杯だ。

リボーン、沢田君…そして。


「雲雀、さん」


なんだかんだいって、並盛での日々をエンジョイできる気がする…。


「何?」

「え?」

「今、名前呼んだんじゃないの?」

「あ…聞こえてました? 私の心の声ですよー! 心の中は雲雀さんで一杯…

「馬鹿を言ってないで…」


馬鹿って言われたー!! うぅ、まぁ、私の心の3分の2は雲雀さんが占めてますよ!


「少し手伝ってもらうよ」

「何を?」

「あの草食動物は君のクラスのだよね? だったら君が責任を持って片付けてよ」


…そう言われて、床に散らばった持田先輩の髪の毛を哀れんで見るのだった。

持田先輩には、アー●ネー●ャーをすすめます…







なお、沢田君は京子に「あの告白は冗談だったんだよね」と思われてしまい、お友達として付き合うこととなった…。