Target7 お呼び出し
むふふーん♪
最近頬が緩みっぱなしの、12歳です!
なんで緩みっぱなしかって? そりゃぁあなた…
雲雀さんの右腕になる為! っていう目標が出来たからじゃないですか!
聞けば雲雀さんは、中学だけじゃなく、並盛全体の風紀を守っているとか。
…まぁ、きっと。暴力による支配なんだろうけどね!
「むふふーん♪」
「何よ、…気色悪いわよ」
「花ちゃん、酷い! 恋する乙女はいつでも想像に耽っているんだよ!?」
「アンタの場合は妄想でしょ? どうかしてるわよ…あの風紀委員長に惚れるなんて」
入学してすぐに、雲雀さんの恐ろしさは1年生にも広まった。
それでも、私は京子ちゃんと花ちゃん、この2人に事の顛末を話した。
「花ちゃんが思ってるような惚れじゃないよー。強さに惚れてるだけ」
うん、恋愛感情はナッシング☆
「でも、噂を聞いたときはびっくりしたよ」
京子ちゃんがくすくす笑ってそういった。
「ちゃんが暴走していた雲雀さんを止めて、喧嘩して互角だったなんて」
うん、なんかいろいろ誤解があるような気がするよ!?
実はあの時、私が助けた新入生Aと不良の先輩たちは、私たちの一連のやりとりを見ていたらしい。
それで、雲雀恭弥と私がやりあってた上に、雲雀さんが私に止めを刺さなかったことから
『 は、救世主だ』
とまで言われてしまった。うーん、救世主になるつもりは毛頭ないのに。
むしろ、雲雀さんの右腕になってやるって野心丸出し! 今のところ自称、右腕だからね。
それからあの不良さんたちは大人しくなったし、新入生Aも私にお礼を言いに来た。
でも…やっぱみんな、私を変な目で見てくる。女子で喧嘩が強いのは…やっぱアウトか!
それでも、この2人は変わらず傍にいてくれるんだけど。
「でね、お兄ちゃんもこの噂を聞いて『ボクシング部に来い!』なんて言い出しちゃって!」
「うーん、女の子のボクシングって大丈夫なのかな、この学校」
「真面目に考え込まないの、全く…」
ほんっと、嬉しいよ。2人と友達になれて…良かったー!
「おい、お前のせいで体育のサッカー負けたんだぞ!」
「ほんっと、お前ってダメだよな〜ダメツナ」
男子が、ある1人を囲ってそう呼んでいた。ああ…沢田君のところかぁ。
彼は、何をしても失敗ばかりの沢田綱吉君。みんなからはダメツナと呼ばれている…
陰のアイドルなんだ!!
ごめん、うそです。こんなの沢田君に失礼だよね。
でも…ダメツナかー…。あ、今日はツナマヨご飯食べたいかも!(それも失礼だ)
「あいつ、何やっても冴えないよなー」
花ちゃんもそうぼやく。
まぁ、花ちゃんは大人の人がタイプだから…沢田君はタイプじゃないのかな?
「京子もそう思うでしょ?」
「え? うーん、よく分からないかな。喋ったこともないし」
「だよだよ。以外にギャップがあるかもしれないでしょ?」
雲雀さんにもギャップあるのかなー? …ないか。
雲雀さんは常に鬼だもん。まぁ、そこがいいんだけど…。
「さーてと、帰ろうかなぁ」
私は席を立った時だった。
校内放送のお知らせ音が、聞こえた。
「1年A組 。1分以内に僕のところに来ないと咬み殺すよ?」
ブチッ。
………呼び出しって、そういう方法ですか…!
これが流れた瞬間、一年生の廊下も教室もシーンとしてしまってる。…おぃおぃ!
「いくの? 雲雀さんのところに」
京子ちゃんが鶴の一声…っていうのかな、あげた。
それがまた、1年生に潤いを与えていった。あーよかった。
「もちのろん。そういう条件だもん!」
「…あんた、絶対いつか死ぬわよ」
「死なないよー。というか、死んでも蘇る!」
雲雀さんのた・め・に、キャッ!
「…恋は盲目ってこういう事を言うのかなぁ」
「もう、京子ちゃんにもいつか分かる日が来るって! 私のは恋じゃないけどさ!」
「はいはい、ほら、行くんじゃなかったの?」
あと30秒ぐらいしかないんじゃない?
「のわあぁああ! じゃ、じゃあまた明日ね、京子ちゃん、花ちゃん!」
私は急いで、雲雀さんのいる応接室に走った。
*
駆けつけた応接室に入れば、その豪勢な設備に目を引かれるよりもまず、
異様なほどに密集しているリーゼント+学ランの生徒集団が一気に眼に飛び込んできました。
おゎ…もっさい! 漢と書いてオトコと読むと…。
「…委員長の呼び出しか?」
「え? …ああ、そうです。1年A組 ! マッハの勢いで駆けつけました…!」
息切れしながらそういうと、草をくわえたデカイ人が私を見下ろしつつも目を見開いている。
私はその人を見上げつつ首を傾げた。
「貴方は…?」
「副委員長を務めている草壁哲矢だ」
「オボッ!? ふ、副委員長さんでしたか!」
失礼しましたー!!
私は思いっきり頭を下げた。
副委員長ってことは、ナンバー2ってことだよね!? あの雲雀さんの! ナンバー! ツー!(黙レ)
「は、初めまして! そして…な、なんか失礼しました!」
「マテマテマテ! なぜ、廊下に出てマッハで帰ろうとしてる! マッハで来たんじゃないのか!」
「…それもそうだったー!」
だって、ドア開けた瞬間にこんなところになるとは思いませんでしたよ!
オール学ラン、オールリーゼント、イエス! もっさい!!
ひ・雲雀さん、早く来て、爽やかな風を吹かせてください!
「あの、…雲雀さんは?」
「もうすぐ来ると思うが…」
「み、みなさんは何ゆえここに?」
「君のために呼んだんだよ」
キター!!
雲雀さんはドアのところに体を預けている。決してこっちには来ようとしない。
か、かっこいい、そして爽やかだ…!
「ひっばりさーん!」
お久しぶりです! と手を振れば
「何日か前に会って戦ったでしょ?」
そう返されました。
アレ以来姿は見ても、会話はしてないので…事実上これが二度目の顔合わせ。
「あ、そういれば…私の為に呼んだって、どういうことです?」
「そのままの意味だよ。彼らと戦ってほしいんだ」
Why!? た、戦うのー!?
「な、なんでですか!!」
「君の本当の実力を測る為、かな」
めっちゃ空気重くなってますけどー!
私の実力測る為の捨て駒ですか!? こんな委員長で大丈夫ですか、風紀委員さん…!
「お言葉ですが委員長、自分は女子に手を上げることなどできません…」
風紀委員の1人がおずおずと手を挙げてそういうと、雲雀さんは睨んだ。
「…咬み殺されたいの?」
「(ヒィッ)す、すいやせん!」
「じゃあ、僕群れは嫌いだから屋上にいるよ。勝った人が屋上に来て」
それじゃ。そう言って教室から出てってしまう雲雀さん。
「せ、折角会えたのに…」
くぅ、こうなれば喧嘩に勝つしかない。
「草壁さん、でしたっけ? 事実上のナンバー2は貴方なんですから、貴方を倒せば皆納得なんですよね?」
「それはそうだが…生憎俺も、女子に手を出すのはちょっと」
「でも、雲雀さんの命令は絶対聞くんだー! って、みんな言ってましたよ」
世論がそういうんだ、間違いないっす。
私がうんうん唸っていると…草壁さんはため息をついていた。
「本当に女子なのか…」
「女子ですよ。ただ、普通の女子であるということは否定します」
戦うのはいいとしても、私には武器がない。
え? 前の戦いでレイピア壊れてるからに決まってるじゃないですか。
「…大丈夫です。雲雀さんとやりあったって噂、嘘じゃないんですから」
まぁ、負けてるけどさ!
私が笑いながらそういえば、草壁さん以外の風紀委員がざわめき始めた。
「で、草壁さん…やりますか、やりませんか?」
「…どうなっても、保証はしないが?」
「大丈夫ですってば! 雲雀さんに勝って、私の願い成就させるまでは…負けませんから」
そう言って私は構え…草壁さんのところに走りこんだ。