Target6 謎な新入生
それは、いつも通り僕が群れていた草食動物を狩っている時だった。
振り下ろした僕のトンファーを細い剣で受け止めた、1人の女。
みれば、さっきすれ違った1年生じゃないか。
邪魔されたことに苛立って睨みつけても、動じず…むしろ笑ってる。
この僕が『風紀委員長の雲雀恭弥』ということを知らないから、こんな顔が出来るんだろね。
すぐに、咬み殺してあげよう。そう思ったけど…。
「…分かった。貴方は…戦うことが楽しいんですね?」
荒い息を整えつつそういう彼女の顔は、まだ笑顔で。
「…強い相手を下すのは好きだね」
嫌味のつもりでそういった。
女は皆弱い。実際に、目の前のこの女子も防ぐのが精一杯だったからね。
でも…やっぱり彼女は動じない。
「だったら…文句は言いません。私と喧嘩しましょう」
「へぇ、やれるの君に。見るからに弱そうだよ」
「関係ないですね! だって私、今貴方と同じ気持ちです。喧嘩したい、貴方みたいな…強い人と!」
楽しんでたんだよ、僕との戦いを。
そうして仕掛け始めてきた攻撃。さっきまでとは全く違う動きに正直驚いたし、関心もしたよ。
リミッターが外れたのか、素早い攻撃は僕を駆り立てる。
3割程度だった僕は、ついつい本気で攻撃しそうになる。
だけど、ここで彼女を壊してしまったら…戦いを楽しめなくなる。
思いとどまって5割の力で蹴り飛ばしてみたら、吹き飛んだ。
ああ、ここまでか。その程度?
「次はどうする気かな、終わってもいいんだよ?」
挑発的な言葉を投げかければ、彼女は表情を変えず
「終わる訳無いですよ、こんなに楽しいのに!」
そう言って僕を蹴倒す。僕の上で、また同じような笑顔をみせてくる。
「ふっふーん♪ 私は強いんですよ、人並みには!」
そう…僕と戦うことをここまで楽しめる奴なんて初めて見たよ。
「まぁ、僕を組み敷いた人間は初めてだよ」
「え、本当ですか?」
思わず出た本音に、彼女はまた嬉しそうに笑う。
そうだ、僕だって楽しい。並盛にもまだ、咬み殺しがいのある人間が生き残っていたんだ。
突きつけられた細い剣は、よく見れば亀裂が入ってる。
それを分かってる僕は、安心感に浸ってる彼女に
「じゃあ、その細い剣がなくなったら…どうするの?」
そう言ってみた。案の定、あっけなく壊れて落ちて言った。
彼女はそこで諦めたのか…僕の上から退いていこうとした。
逃さない、こんなに面白い人間を見つけたんだから。
捕まえて名前を聞けば、って言う新入生だった。
僕は確かめるように、名前を言えば、
「はい」
と笑って答えてくれる。
「覚えておくよ。5割の僕とやりあってここまで張り合えた人初めてだからね」
「それはそれは光栄でs…って、5割ィ!?」
「本気だしてたら、君は今頃日の光を見てないよ」
まだまだ余裕なんだよ、僕は。
そういえば彼女は深くため息をついて落胆した顔。
いい風が吹いて、僕達の間に沈黙が流れる。
さて、次はどんなことを言ってくるのかと舞ってれば…予想外なことを彼女は言ってきた。
「好きです、雲雀さん」
意味分かって言ってるのか、打ち所が悪かったんじゃないの?
そう思っていれば、
「なんていうか…貴方みたいな強い人、はじめて見たものですから。
こうやって喧嘩して、負かされちゃった訳ですが。…んー、傍にいて一緒に喧嘩してみたいとは思うんですよ」
そういう。つまり、僕と戦いたいんじゃないってこと? それじゃぁ、僕がつまらない。
そういえば、彼女は間抜けな顔を見せる。僕のいってる意味が分かっていない顔だ。
「この学校でここまでやれる人物は君ぐらいだから、咬み殺す獲物がいなくなるとつまらないって言ってるんだよ」
言葉に出さなくても理解してよね、それぐらい。
彼女は言葉の意味には納得したようだが、
「仲間とかには入れてくれないんですか!?」
と相変わらず言ってくる。
「群れるのは嫌って言わなかったかい?」
「そうだった…で、でも! そう言いつつも、風紀委員のトップじゃないですか!」
「あれは別物だよ」
やれやれ、その後も風紀委員に入るやら、男装するやら、現実離れした発言繰り返すから…。
いい加減僕も、あきれ果ててきたよ。
本当に、さっきまだ戦っていた子? にしては、発想が幼稚すぎ。
「私は、雲雀さんと戦いたいんじゃなくて…その強さの秘密を知りたいんです!」
「戦えば分かることだよ。、君は…」
僕の、獲物だ。
そういえば、彼女は少し頬を赤くした。…普通の男だったら勘違いするよ。
君はどうも…僕を恋愛対象として好きじゃなく、僕の強さにほれ込んでるだけなんだよね?
…でも、何? さっきの反応は。
…まぁいいや、僕が楽しめるなら…なんだって。
僕の傍で一緒に戦いたいと言う謎の女。
「…うぉー! マッハで駆けつけます! で、勝負して勝って見せます!」
笑ってばかりの、。