Target5 好きです、雲雀さん!
ああ、負けちゃったよ。でも、強かったし仕方ないよ。
私は降参しようと、雲雀さんから退こうとした…ら!
「…ギャッ!」
すかさず腕を引かれて、無理やり立たされた。腕がもげるー!!
腕は取られた状態。彼の方が十数センチ高いので…ほーら、バンザーイ☆
「何もしないって言ってるのに、なんですかこの仕打ち。あれですか、幼心を取り戻そうって言う魂胆ですか?」
「そんな幼稚ものに興味はないよ」
「幼稚ってひどいな。じゃあ、貴方の興味があるものは?」
「君の名前、教えてくれる?」
ん?
私の名前って…名乗ってなかったんですか? あらまー!
「言ってませんでしたか、雲雀さん!」
「君が僕の名前知ってるのに、おかしいよね、これ」
「いやー、言ったつもりだったんです。というか、自己紹介しますから、バンザイだけは勘弁してください」
抵抗なんてしませんよ、これまじです。
羞恥心によって顔が熱いんです。ここに、人がいなくて良かったよ!
そういうとやっと腕を解放された。ああ、肩こりそうだ!
「ふぅ」
「名前は?」
「今言います! えと、1年A組のです。本日入学したばかりのピチピチの12歳です」
「死語だよ、それ」
「はい、つっこまないでください!」
分かってますよ。でも、言いたくなるお年頃だったんです…!
「、ね」
「はい」
「覚えておくよ。5割の僕とやりあってここまで張りあえた人は初めてだからね」
「それはそれは光栄でs…って、5割ィ!?」
「本気だしてたら、君は今頃日の光を見てないよ」
余裕そうな笑みを浮かべる雲雀さんに、心の底から恐怖を覚えました。
うっはー…じゃあ、私まだまだ弱いってこと!?
思い知らされたな…。そりゃそうだよね、彼はこんなに余裕だもん。
チラリと雲雀さんを見れば、彼は落ちていた学ランを拾いあげて、肩に羽織ってる。
そこに風が吹いて…学ランが綺麗になびく。…なんだか。
雲雀さん、絵になるんですよ。
強いし、かっこいいし、この人といれば…退屈しないかな。
私、この人と喧嘩するって言うよりは…同じ世界を見てみたいのかもしれない。
だから、こんなこと口走ったのかな。
「好きです、雲雀さん」
その強さに惚れましたよ、私。
「は?」
雲雀さん、呆気に取られてついつい間抜けな声が出てますよ。
「え、好きって言ったんです、けど」
「急に何言ってるの。頭おかしくなった?」
「いえ、いたって通常…」
「じゃあ元から変な神経してたんだね」
「そんなかわいそうな子を見るような目、やめてくださいよ!」
いや、恋愛感情は皆無なんですが。
「なんていうか…貴方みたいな強い人、はじめて見たものですから。
こうやって喧嘩して、負かされちゃった訳ですが。…んー、傍にいて一緒に喧嘩してみたいとは思うんですよ」
「…それだと僕がつまらないよ」
はい? 何言ってるんだろ、この人は…。
私が相当間抜けな顔をしていたのか、雲雀さんは呆れた顔をしてる。
「この学校で、ここまでやれる人物は君ぐらいだから、咬み殺す獲物がいなくなるとつまらないって言ってるんだよ」
「えっとつまり、こうやってやりあう様にって事ですか?」
「ご明察」
私に地獄見てろや、コノヤロウとでも言いたいのか、この人は!
「仲間とかには入れてくれないんですか!?」
「群れるのは嫌って言わなかったかい?」
「そうだった…で、でも! そう言いつつも、風紀委員のトップじゃないですか!」
「あれは別物だよ」
群れてないか、あの人たち! 朝校門に並んでやってたじゃんかー!
こうなれば…
「じゃあ私も風紀委員になります! あ、でもリーゼントはやだな…」
「男子しかなれないよ」
「だ、男装して―」
「そこまでして入りたいの?」
「私は、雲雀さんと戦いたいんじゃなくて…その強さの秘密を知りたいんです!」
「戦えば分かることだよ。君は…」
トンファーをゆっくり、私に突きつけてきた。
「僕の、獲物だ」
不覚にも、ドキッとした。やっぱ…私ドMなのかな?
この人が私を見ていてくれるなら、それは凄く嬉しいこと。
「…どんな状況でアレ、私が勝ったら、傍においてくださいね!」
「君さ、天然とか言われない?」
「んー…言われたことはありますね!」
雲雀さんはトンファーを下ろしつつため息をついた。
やだ、呆れないでくださいって雲雀さん!
「僕の呼び出しにはどんな状況下でも来ること」
「なんです? それ」
「条件。それさえ守ってくれれば…どうでもいいや」
「…うぉー! マッハで駆けつけます! で、勝負して勝って見せます!」
だから、待ってて下さいね! 私絶対強くなりますからー!!