Target2 雲雀さん、参上


入学式が終わると、私たちは帰ることになった。
京子ちゃんと花ちゃんは帰っちゃったから、私も帰ろうかなぁと思った…。

で・も・だ

まだ目的は達してない! 部活だ、部活!

先生に尋ねれば、見学は自由に出来るという事。
私は運動系の部活を見て回ることにした。


バレー部、バスケ部、卓球部、剣道部、柔道部、ダンス部。
ボクシング部も見たけど、あれは男の人しか無理だよね;

やっぱ無難に陸上部かな…剣道部でもいいんだけど、フェンシングとは別物だし…。


「ぬー…たくさんあるよ…京子ちゃんたちはどこにも入らないみたいだし」


帰宅部って、なんかもったいない様な気がするんだよねー。
マネージャーとかも、仕事してて自分だってやりたい! とか思わないのかねぇ。


「ま、いつでも部活は入れるからいいんだけど…早めに決めたいー」


どうしようなぁ…ほんっと迷う…。




ハァ。

ため息つきつつうろうろしていると、何かの人だかりを見つけた。
なんだかすごく騒いでる…部活の勧誘かな?


「あのー…何してるんですか?」


側に居た男の先輩に話し掛けてみる。


「新入生イジメだよ…。お前も新入生だろ、気をつけたほうがいい。何かあればすぐに不良に絡まれるからな」


不良…この学校にもいるんだ! レアだ、希少種だっ!!


「ご忠告、どうもですっ」


私はお礼を言って、関わらないように踵を返した。








その時…すれ違った人に、一瞬で目を奪われた。


思わず、私は振り返ってしまった。



この学校の制服ではない、学ラン。
右腕の風紀と書かれた腕章。

それは、まさに朝校門に立っていた人たちと一緒。そう、姿は。


でも…感じたものは違った。何が違うか分からない、直感的に。
私は足を止め、その後ろ姿を見続けた。


人だかりの出来たところまで行くと、その人は止まって…。


「ねぇ、何群れてるの?」


そう言った。
その言葉が合図となったのか、騒がしかった場所は、静まり返った。

え、何…、あの人は一体…。

そう思っていると、さっき忠告してくれた先輩が顔を真っ青にしていった。


ひ・雲雀さん!


声を上げた先輩の方にその人が首を向けたら、すぐにその先輩は頭を下げた。
周りに居た人も習って頭を下げる。中には静かにその場から居なくなる人たちもたくさん。

…一体、何が起こったの…? 雲雀って人は…何なんだろ?

まぁ、一言でいうなれば。


「長―オサ―だ…並盛のヘッドだな、あれは!」


下手すれば校長より身分上なんじゃないの!? いや、勝手な妄想は失礼か。


「で、いつまでこうしている気? 咬み殺されたいの?」


その言葉を耳にした人々は、一斉に散らばって…。
いつの間にか私と、騒ぎの中心だった不良と、苛められていた新入生だけが残されていた。


さっきまでは、人が一杯居たせいで見えなかったけれど
1人の1年生に対して5人の先輩が殴ったり、蹴ったりしていた。
うわ、卑怯だ。…って言っても、私自身も助けようなんていわず、スルーしたから駄目なんだけど…。


あれだ、見て見ぬフリも共犯? うん、ごめん。自首します!


まぁ、雲雀と言う人が現れてから、不良の手は止まっている。
苛められていた新入生Aは、かなりボロボロだ。

ああ、新しい制服だったのに…!

心なしか同情してしまう私は、妙な威圧感を持った雲雀さんの横を通り抜けて新入生Aに近づく。


「君、動ける? 制服はぼろぼろだけど…」

「え、あ、…大丈夫」

「だったら今のうちに逃げなよ」

「その、腰が…」


抜けたんだね?

大きな声で言わないでー!


そんなやり取りをしてる場合じゃない。なんとなく、嫌な予感がするんであって…。
チラリと不良軍団を見れば、彼らは雲雀さんとやらをじーっと見ていた。


正面から顔をまともに見ると、あわぁ美形なお顔! クールビューティーって奴ですか!


まぁ、不良の視線があの人に行ってるなら…問題はないかな?


「ほら! 肩貸すから、遠くに行こう、新入生A」

「僕の名前は田中なんだけど…」

「……平凡すぎるので却下します

「え、却下なの!?


腕を回して、引き摺る形で遠くへと運んであげようとした…けど。


「ご、ごめん! 支えきれない!」


男の体を支えるのはかなり無理があったー!!!



「お、おい、さすがに天下の風紀委員長相手は危ないだろ!」



仕方ない、ここは黙って傍観してよう…。
私は意を決して、新入生Aの隣で様子を伺うことにした。



「けッ! 所詮…1人だ。群れて得かかれば怖くねえ…ぜッ!」


不良の頭らしき人は、拳を構えて雲雀さんに突っかかっていった。


「おら雲雀恭弥! お前を倒して俺が並盛を支配――ッグァ!!」


……What!?


一体何が起こったのか、これまた分かりません!
言えるのは秒殺、ううん瞬殺だったことだけ! あっという間劇場ですか!?


いつの間にかトンファーを手にしている雲雀さん。吹き飛ばされた不良。
呆然とする仲間と、私たち。


…神風、ですか。



「…群れることしか出来ない草食動物なんかに興味はないよ。
 だけど、君たちは並盛の風紀を乱したから…咬み殺すけどね」

「ヒィッ」


不良達の顔が一瞬で青ざめたぞ。
でも、そこはここの間抜け新入生Aとは違い、腰は抜けずに逃げ出す者も。


…それを、狼の如く、雲雀さんは捕らえにいく。
一瞬で迫る距離。トンファーで殴打された不良は吹き飛ばされて…
先頭を逃げていた不良の前に、投げ飛ばされた不良落ちて逝った…。

もう、どの不良なのか自分でも分からなくなっちゃったよ!



「…弱いから群れたがる。それで勝てもしないのにね。
 もっとも、君たちは僕の並盛の風紀を乱したんだから、容赦なんてせずに…殺すけど」



いや、それ正義じゃないよね? もはや悪の領域だよね!

教えて神様!


一瞬、私の脳内にハイ○の歌が…(教えて〜おじーぃさん〜♪)




そうこうしているうちに、どんどんボコボコにされる不良さんたち。
見てて気分がいいものではない。それは、苛められていた新入生Aもだったのか。

「見たくないよ…もういいのに」

そう呟いてる。…やれやれ。


このままじゃ、雲雀さんは警察にお世話になることでしょ。
だったら…


「新入生A」

「いや、君も新入生でしょ! 名前も僕言ったよね!?

「私が止めてきてあげる」

僕のいったこと華麗にスルーしてるー! …っていうか、えぇぇ!?

アディオスッ


私は荷物の中から、目的の物を取り出して走って暴行現場へ。


さぁ! 未来の彼方へレッツゴー!(何か違うかな)