私はたくさんの人を殺してきた。

たくさんの罪を犯してきたの。

疲れたわ、ソフィア…。そろそろ休みましょう?

そう思ってるのに体は…私の体はアクマとして動き続ける。

自分では止められない。


だから、貴女たちエクソシストなら…きっと。





萌えて死に行く定めだと…





ハロハロ〜、って気分じゃないんだけど。口には出せない、脳内おさらい!


華の16歳、が1人で寝ていたときでした。
ふと物音がする、それはギシギシと音を立てて近づいてくる…
幽霊でしょうか…。そんな恐怖に襲われていると
現れたのは、貞子顔負け!の長い黒髪持ちのKANDAくんでした☆
びっくりさせんじゃない、こンのエロ助めが…ッ!

とか何とか思っていると、ゴズが居なくなったのこと。
どうやら外へ出て行ってしまったらしく神田は捜索に向かうらしい。
その時、ナイスシチュエーション!頭ポフポフです。
仮にも神田は美形ジ○ニーズの男が一般の女にポフポフした並の影響です(当社比)

さてはて神田が出て行った後、心配で下りてきたソフィアが登場。
そこで意外な事実が発覚。ソフィアは双子でアンジェラという妹が居たらしい。
そして何より、彼女はアクマだったということ…!
コスプレ好きの父や村人に苦しんだ病弱なアンジェラは死んでしまい、
それを嘆いたソフィアは「今、会いに行きます!」的な勢いで彼女の魂を呼び戻し、アクマにしてしまったのです。
…スイマセン、ところどころ美化してお送りしております。

ついでにアクマの仕組みも知ってしまった私は大きなダメージを受けて…
改めて「エクソシスト」とはなんなのかを実感した。
それからは恐らくアンジェラ(ソフィア)の能力であろうか懐かしきあの厄日の再来!
見事、覚えのある事故やら出来事は回避されていて…私は思い返す。
同じ日なんて来るわけねぇだろ、アホンだらぁー!!!

目が覚めれば神田とゴズ、さらに神田のハグが待っていました。
私は嬉しはずかしなんだが、ゴズは顔を赤らめてるぜぃお兄さん☆
解放された私は、神田の純情ボーイっぷりを見て萌へる

スンマセン、ヨダレが出てきてますよ奥さん!(テメェだ!)
ソフィアがアクマである事を知ったゴズは彼女に惹かれていたから
彼女を『壊す』ことを拒否したけれど…私も神田も、彼女を壊す。
それがエクソシストの仕事、そして彼女を救うことだから…。

そして私たちは、アンジェラとソフィアが待つ雑貨屋にたどり着いた。



雨上がり、満月の夜空の下でアンジェラはもとの『ソフィア』の姿で立っていた。
だけどその姿は、私が初めて彼女を見たときとは違い、もっと儚く…脆いものだった。

私はまだ眠っている女王サマ…黒姫を、木の幹にできた隙間に挟んでおく。
お、起きないでね…。怒ってもらっても困るから!


…、やっぱり戻ってきてしまったのね」

「ソフィア、ううんアンジェラ。私がすべきことをちゃんとしないといけないと思って」

「そう」


彼女は短くそう答えると…アンジェラは高らかに笑った。



「あなた達も全てを悟ったのでしょう!?その通りよ、私はアクマ!
 千年伯爵の手によって作られた兵器よ!
 私はアクマになって、憎しみを理由に村人を殺してやったわ!!」


その妖しげな笑みはとても恐ろしいもの。
本当に、あのソフィアだったんだろうか…、それだけ、憎しみ悲しんだという事だよね。


「あいつらの子供をあの子に呼びだし、みんな殺した。死体は全部、あの小屋の床下に埋めたわ!」


ゴズが言ってた匂いは、コレだ。人の死臭…。


「私の元に押し寄せてきた親達は、返り討ちにしてやった。
 人間が、アクマに勝てるわけがないじゃない。何人かは呼び戻されてアクマになってた。
 馬鹿なあいつらは、村のどこかに自分の子供が監禁されていると信じていた。
 だから私が言うとおり、村に近づく者を殺してきた」


あの一本道にいたのは、アクマになってしまった村人だったんだ…。



「1体だけ取り逃がしたアクマがいただろう。
 ソイツが言った最期の言葉『スマナイ。許シテクレ』
 あの言葉の意味は守ってやれなかった自分の家族への言葉か
 それとも…忌まわしい掟の生贄になった…娘への謝罪か…」


あ、あの時のアクマは神田が壊したんだ。
よかった…ちゃんと見つかってたんだ!

さすがにあの時、無視され、いじけていたアクマはかわいそうだったもん☆
きっとあの人の魂があんな感じで弄られキャラだったんだろーな…
という勝手な仮説を立ててみました!


まだ、迷いがあるゴズは信じられないといわんばかりに首を振る。


「そんな……本当の魔女じゃないですか!それじゃ!」

「そうよ。千年伯爵と一緒に話したの。ここを本当の魔女の村にしようって。伝説を本物にしようって」



アンジェラが楽しげに微笑んだ。小さな迷いをその瞳に映しながら。



「なんでそんなことを!村人が憎いのは分かります!でも…でも、子供たちは関係ないじゃないですか!」


ゴズの叫びを聞いたアンジェラは、キッと睨みつける。
ゴズはそれにビクつき、1歩退いてしまう。そりゃ、ビビリ君だからね…ゴズ。。。


「私に魔女であれと言ったのは村人たちよ!だから私は…身も、心も!魔女になってやった…その何が悪いのよ?」


ゴズが痛々しい表情を浮かべながら、なおも叫び続けるアンジェラを見つめた。
印象深い金色のウェーブの髪、空色の瞳。私も西洋人形みたいだと思ったし
お持ち帰りして、家に飾りたい――とかいう、邪まな考え持ったぐらいだもんね…アハハ。



「ソフィアさん、いえアンジェラさんは天使みたいで、優しい感じなのに…どうして…なんで!」


ゴズが涙ながらにそう言っても、アンジェラは聞かず…空を見上げた。


「憎い憎い憎い!…私が、何をしたって言うの…」


しばらく経った後に、神田が身構えたのが分かった。
空気が変わってる、なんだかギスギスする…。この空気は、知ってる。


「…アンジェラ」

「ここは『魔女の村』なのよ。ここに来た奴は皆、私に殺される!」


アクマに姿を変える、時だ。

禍々しい気を放ちながら、めきめきと音を立てて顔が皺だらけになっていく。
その顔で神田を目で睨み、口元はゆがめながらいう。

「あんたが私の手下を倒したのね。伯爵が言っていたエクソシスト…聖職者か。
 いいわね、神の使徒。相手にとって不足はないわ!」


そう言って両手を大きく広げた。


「あーははははは!現代の魔女の姿を見せてあげる!」


顔にビキビキと血管らしきものが浮かんだと思えば、口は三日月型に裂けていった。


「レベル2のアクマなの、アンジェラは!」

「見れば分かる!…お前、その仕組みを知ってたのか?」

「…簡単にだけど、ね。たくさん殺せば殺すほど能力が上がって強くなる。
 まるでゲームみたい、と思ってたけど…現実だったわけだ」


じっとアンジェラを見つめれば、美しい金色の髪をなびかせた、末恐ろしいぐらい妖艶な魔女が光臨していた。


「私、知らなかったの。アクマが最初に人を殺すのは…呼んだ人なんだね。
 その人の皮をかぶって生きて、人を殺していくんだね…」


そういう私を神田はじっと見ていた。私もまた神田を見る。


「怖いのか、やっぱり…」

「…怖くないって言うのは嘘になる。でも、やらなくちゃいけない。
 私は…私たちは『エクソシスト』なんだからね?」


にっと笑って見せてやる。
あぁ、体の震えが止まらないよ…さっきまで一緒に居たんだもんね。
笑ってたんだもんね、一緒に…。

私はアンジェラを見据える。


「もう、楽になってほしい」


そういって私のイノセンスを発動させた。
それと同時に、アンジェラも体を包んでいたケープから三日月の鎌を取り出し…ゴズに向かっていく!


って、ゴズ…!あんた鼻水また垂らしてないてる場合じゃないでしょー!!!



「ゴズ、逃げて!!マッハで!」

グズ…………あへ?」


神田がゴズのところまで走り、彼を突き飛ばした。
うわー、あれでゴズが乙女なら、なかなかいいシーンだと思うんだけど…

そんなこと思ってる少しの間に、また攻撃を始めるアンジェラ。


「うわぁああ!!」


ゴズは情けない悲鳴を上げながらも、その攻撃をターンして避ける。
でっかい体のくせに、凄く素早い…!ドーピングでもしたか!?


「ゴズ、ドーピングしてたの!?」

「いえ!違います!フットボールを少々!」

やっぱド−ピングじゃないのぉおお!

「おい!訳の分からないこと言ってねぇで距離をとれ!」


アハハ☆神田はドーピングなんて言葉知らないもんね!
神田の辞書には『六幻』『イノセンス』『アクマ』『刻む』…その他累々しか乗ってない!
多目に見積もって20語ぐらいしか収録されてないんじゃないの!


「神田のお・バ・カ・さ・ん♪

「テメェ…覚えてろ!」



アンジェラの怒涛の攻撃はやむことを知らない。
でも…やっぱり私を狙っては来ない。神田とゴズばかり…。

やっぱり私が、ソフィアと似ていたからかな…。自分双子じゃなかったか?アンジェラよ…。

そんな突っ込みはともかく!とか脳内整理していると…



「アンジェラ!もうやめてくれ!!」


悲鳴に近い叫び声がその場に響いた。…この声…。



「店主、さん?」



店主はアンジェラを見上げていた。




「私が悪かった…頼むから、もう許してくれ。もうやめてくれ……。
 あの時、私がお前にコスプレをさせなければ、写真を売ったりしなければ…
 その他やましいこと云々をしなければと…後悔しているんだ」


コスプレの事実認めちゃってるし…おい
つーか、その他やましいこと云々ってなんだ!?何してたんだ!?
アンジェラが私に語った中にはなかったぞ、店主ゥゥウウ!!

お前、絶対ヘンタイだ…キチガイじゃぁ!!



「これ以上、人が死ぬのを見たくないッ」



切実な店主の願い。
少なからず、揺れ動くアンジェラの心には響いているはず。


がっくりと膝を地面につけて涙する店主。
「コスプレが、私の趣味がいけなかったんだ…」とかぼやいてらっしゃるがスルーだ。

鎌を手にしたアンジェラは…店主にゆっくりと近づいていく…。



ま、まさか!!



「駄目、店主さん!逃げてぇ!」


私はアンジェラを止めるために走る!守る力がある私が守らなきゃ!!


じっと店主を見下ろすアンジェラ。その瞳はもう…アクマ、だ。




嫌な、音が、聞こえ、た。




私の足は、完全に止まる。



目の前では、鎌がお腹に刺さっている店主さん。



スローモーションのように、ぐらりと店主さんの体は完全に地に落ちた。





「あああ!!」



ゴズの叫びが聞こえた。



ッ!」



神田が私の名前を呼んでいる。





守 れ な か っ た …?




「しっかりしてください!」


ゴズが店主さんを揺さぶってる。店主さんは震える唇で言葉を紡いでいる。



「すまない、ソフィア、アンジェラ…守ってやれなく、て…」



それ以降、店主さんの声は聞こえなかった…。




「アンジェラ、どうして、なん、で?」

落ち着け!おい!」



…私は、アクマなのよ…、もう十分満足、だわ」



神田が、私を支えながら六幻を構える。



「…、ツラいんならここにいろ。俺はアイツを…斬る」



ツラい訳じゃない。決めたんだもん、エクソシストとしてアンジェラを壊すって。
でも、そのアンジェラが…お父さんである店主さんを殺したことが衝撃的で。。。


そっか、まだ生半可な決意だったんだ…。


「魔女の力、みせてやるわ。――出て来い!」


ざわざわと空気が揺れた気がした。
たくさんの足音が近づいてきている…。ぞくぞくと村人たちが集まってきた。



「チッ、全員死んだ魚みたいな目をしてやがるッ!」



まるで、生ける屍だな。
そう、神田が呟いた…。これら全員がアクマだ…。



「ゴズ!コイツつれて逃げろ!!」



神田がそういうと、ゴズが私を引っ張り上げる。
動かない、情けない私の足は千鳥足のようにひょろひょろ。


その間、アクマを神田が次々と薙ぎ倒している。


不安だった。私を引っ張っているゴズも、黙々と戦っている神田も…
店主さんのようになっちゃうんじゃないか、って。



そんな時、ゴズの歩みが止まった。



さん、アクマに囲まれました…ッ!」


…私に倒す力はない。ゴズにも…。
だけどゴズは諦めちゃいなかった。近くにあった鉈を振り回している。



さん!俺は正直、救うことは生かせることだと、思ってました!」


「だけど、アクマになった人にとっての救いは違うんですね!
 アクマになってしまった人は、壊されなくちゃ救われない!
 ずっと魂がアクマのボディに繋がれたままなんですね!!」


あぁ、そうだ。決意したんだね、ゴズ。私のほうを向き、強い瞳で見つめる。

そうだ、救うんだ。アクマになったアンジェラを…止めるんだ。



「ゴズ……ッ!後ろ!!!」



ゴズの後ろでは斧を構えた村人が!発動している銀なら間に合うッ!


一龍『銀』、護ノ銀!!


それでなんとか攻撃を防ぐけれど…立て続けに村人達の攻撃が来る。


さん!」


銀は一瞬しか盾を作れなかったもん。それを継続してると…
だめだ、気を緩めたら消えてしまいそう!!


さん!無理しないでください!!」

「だいじょう、ぶ…エクソシ、スト、だからッ!」


ぎゅっと槍を握る。ガンガンと、金属がすれる音が聞こえてくる。
一撃一撃が凄く重たいよ!そう思った瞬間、



「「あっ!!」」


壁に亀裂が入り、崩れてしまった。槍は元に戻り、首におさまった。



さん、退いて!!」

「ッ!!」


意識が朦朧とするッ!!


私に…斧が振り上げられる…!



「死にたく、ないの、に…」


ぎゅっと目を瞑り、衝撃を待つだけしか出来ない!!
いつか会ったな、こんなこと。

ここに来て最初にアクマに襲われた時…神田が…そう、神田が



「かん、だ…?」



あの時と同じ、神田の温もりを、荒い息遣いを…感じた。



「神田…?」



神田が、私を抱いて避けた?でも、動いてなんかない。
もしかして…!


「うわぁあああ神田さん!」



ゴズの悲痛な声が耳に響く。
下に目を移せば…血が飛び散って、今もまだ流れている。



「な、んで…神田、神田!」

「ッ、ゴズ、来るな!」

「で、でも!そんなに血が!傷口からアクマのウィルスに感染します!」


アクマの血?まさか、神田も…死んじゃうの?
村人みたいに?店主さんみたいに?アンジェラや、ソフィアのように?


やだよそんなの、やだってば!!



「死なないで、神田、やだよ、ねぇ…」

「死ぬかよ、俺は…」


ぎゅっと私を抱きしめる。私に血を触れさせないように。



「お前を置いて、死ねるわけねぇよ…アホ」



それでも、私…



「ッ!」

「あ、神田さん!さんッ!」



また、村人が武器を構えている。




神田は余力振り絞って、私を抱いて飛ぶ。
その度にまた、血が滴り落ちる。


その状態で六幻を構える。


「何するのッ!?」

六幻、災厄招来…



村人に向かって、横一線にふるった。


界蟲『一幻


またあの時の奇妙な生き物達が、村人達を次々に襲った。
村人達は爆発し、残り数体となっていた。

すごい…でも、この怪我で…!?


神田は私を安全なところにおき、残った村人に向かって走る。



「神田ぁあ!!」


村人達を斬る神田の姿に、迷いなんか一切ない。神田の強い意思が見える。
あんなに酷い怪我をしているって分かっているのに、私は神田に見とれてた。


それでも、あの傷は目に付く。痛々しい、私を庇ってついた傷。



「…さすがね、エクソシスト。だけど…私に敵うかしら」


全ての村人を倒されたアンジェラがあの笑みを浮かべながら神田を見下ろす。


「ほざけ…!」


すると急に、神田の動きが止まった。
アンジェラも動かず、笑っているだけ。


これは、私にかけた術みたいなのと同じ!?



「神田、神田!!」

「無駄よ、今彼は…貴女と同じように幻覚を見てる。
 それも彼が最も苦しむ幻覚を、ね」

「ッ!神田ぁ!!」


駄目だ、早く目を覚まさなくちゃ…神田だって耐え切れるか!


護らなきゃ…護らなきゃいけないの!



護る力を…!






―――





そう思ったとき、また…声が聞こえた。この声は『神空』?



私を呼ぶ声が、聞こえた。この声は…イノセンス?
案の定、首元でイノセンスが光っていた。
イノセンスは、いつの間にか槍の姿で目の前で浮いていた…。心霊現象ですか?



―――ふふっ、銀のわたしは使えるようになったみたいね?



あぁ、そうだった。『神空』は7つの龍が集まって1つだっていってたような…。



―――とのシンクロ率が上がるたびにバリエーションが増えていくの。
そしたら、銀のわたしだけじゃなくて、あーんなのもこーんなのも使えて
世の中の変態という変態共を、地にデコすり付けひれ伏せさせる
ってことも可能なのよ



別にいらない、そんな特典!!



―――そう?ほんとうに?まぁそれはいいとして、
今のあなたのシンクロ率ならもう1つのわたしが使えるはずだわ。
そしたら、あの長髪パッツン野郎とか巨体スケベ野郎を不本意だけど護ることも出来る…



不本意なのかよ…。だけど、私の力は護る力だもんね!



―――うんうん、その意気よ!
それで、わたしについて少しだけ話していくわね。
わたしは7つなの。銀が基本形で、あなたさえいれば発動可能よ。
鉄分とか鉄らしき物質のものがあるならそれを使うことも出来ちゃう天才型なの!



天才型とか自分で言っちゃったー!



―――だって、事実だもん☆
それと、ほかの龍について…風・地・水・炎・木…そして金。わたし含めて7つね。



じゃあ、次使えるのは…風?



―――察しがいいわね!風も扱いやすいもの。空気さえあればできちゃうから!
まぁ、銀のわたしが天才型なら、あっちは秀才型ね☆



どのみち全部優秀だって言いたいんだなコンチクショウ…



―――うふふ、神の力は無限大の力を秘めているのよv
とまぁ、こんなかんじね。さぁ、そろそろ分かってきたかしら?



あなたが、風で護るのよ!




ふっと、私の頬を風が撫でる。


「神田さん!あぁもう!さんどうしましょう!」

「…風が、護る力を?」



神田、目を覚まして。
私は走って神田に駆け寄る。そして耳元で叫んでやる。


「バ神田ァ!!!はよ目ェ覚まさんかい!!!」


私は槍を上に掲げる!
頬を触れていく風が強まっていくのが分かった。


これが、私の新しい力よ!



二龍『風』、護ノ風!!



風が、私を中心にまるで竜巻のように渦巻く。
これでアンジェラと神田を分断したし…マシにはなるはず!



「ゴズ!神田の悪口言いまくるわよ!」

「あ、え?」

「いいから!神田のバーカッ!

「ッ解りました!神田さんの六幻のオタク!!



釣り目!愛想悪い!女顔!人でなし!
いつか女のしりに敷かれるぞ!というよりすでにリナリーに敷かれてるぞ!
コムイが怖くて仕方ないくせに!ビビリめが!



「神田のー!」


まだまだ言おうとした時、神田の手があがり、六幻をふるっていた。
そして瞳に光が宿りだす。


「うるせ、ぇ、もう聞こえてる!」


神田の意識が戻った…!


「後で覚えてろよ、テメェら!」

「良かった…!」


ふっと安心感が襲い、涙が出そうになった。
だけどここはグッとこらえてみせる。泣いてみせるか!

風の音に紛れて、外ではアンジェラの悲鳴が聞こえた。
神田が術を破ったことによって、少なからずダメージがあったみたい!



「風が、強い…あいつの力か?」

「まさか!さんのイノセンスの力です!」


お前の?と言いたげな視線を向けてくる。
ふふふっ、成長したでしょう?わたし!


「新しい力、『風』だよ!護った、私のイノセンスで…!」


もう、誰も傷つけさせはしないから。もう、絶対に!


「…そうか。……アンジェラは風の外か?」

「そうだね、遮断したから。それより――傷はいいの!?」


そこが一番気がかり!アクマの攻撃を受けたんだ…ただですむわけない!


「アホ、俺にはアクマのウィルスは効かねぇ」

「ど、どういうことですか?」


よく分からないゴズがオドオドしつつ訊ねる。
私も分からない。何で効かないのよ!



「…そういう体なんだよ。お前たちとは違う」

「なるほど、でも…そりゃ違うわよ。馬鹿は風邪ひかないって、本当だったんだね!

テメェッ!…まぁいい、それより決着をつけるぞ」


神田は立ち上がって、私を見た。



「コレを解け、

「うん、無理しないでよね?無理するなら、まぁ…護るから!」


護るだけが私の唯一の力なんだから。
私は風が止まることを意識する。徐々に弱まる風の先に、苦しむアンジェラが見えた。


「なぜ、バレた……狂おしいほど望んでいることを前にして、なぜそうも冷静でいられる…っ!」


アンジェラの問いは完全無視で、神田の口が開いた。


「おまえの能力は相手の記憶を読み、そして相手の願望や執着しているものを夢として見せて惑わせるものだな」

「なるほど…!その能力で子供達を誘い出して、あの小屋へと導いたんですね。さんも、それで村の外まで…」


そうか、アンジェラの能力だったんだ。惑わされてたんだね、私。
神田が見た夢、少し気になるけど…そうなると、ゴズが見てた夢って…ステーキかよ


なんつー幼稚な…。さすがゴズ、あんたなら違和感はないぞ。



「狂おしいほど望んでいることか…お前が読めたのは、俺の望みのほんの表層に過ぎない」


神田がキッとアンジェラを睨みつけるように見上げる。


「それに、俺の望みは他人に叶えられるものではない。
 あとひとつだけ言っとくぞ。俺は、惑わされない。…こいつがいる限りな!」


私を指差しながら神田がそういった。
私は多分、初めて…神田に信頼されたんじゃないだろうか。


あぁ、もう。嬉しすぎるんだよコンチクショウ!



「…神田!アンジェラをお願い!」

「お前に言われるまでもねぇ!」


神田が飛び上がって、六幻を構えた。
横に振り切るそれは、神田の技・・・。



「災厄招来…界蟲『一幻』!


アンジェラが群がる蟲にひるむことなく、そしてまた反撃するわけでもなく。


ただ、自然に受け入れた。



その時の顔は…


『やっと救われる』


とでも言っているような、顔。



私は思わずそんなアンジェラに手を伸ばしてしまう。届かないと分かっていても。



「アンジェラッ!」



せめてもの、救いの手を。同情とも言うのかもしれないけれど。



アンジェラの体は静かに地に落ちていった。
ずっとその様子を見ていたゴズが、涙ながらに駆け寄ろうとする。
私も出遅れて1歩目を踏み出そうとした瞬間。


「来ないで!」


血を吐きながら、強い瞳でアンジェラが私とゴズを睨んだ。
ゴズもピタリと足を止めてしまった。


「私は、魔女なの…。この村の者全員、自分の父すら、殺した恐ろしい、魔女なのよ」

「……知ってます」

「でもアンジェラ、恐ろしいだけじゃなかったよ」


私とゴズが、アンジェラの傍まで近寄る。目の前まで近づくと、アンジェラが手を伸ばした。


、ありがとう。救われた、わ。ソフィア、も…」

「…う、ん。いいんだよ、もう、楽になって!」

「アンジェラさん…」


ゴズがアンジェラの手に触れようとする。


アンジェラは優しい瞳で…一筋の涙を流した。



「私は魔女。……誰かの優しい手の中で、死んでいくわけにはいかないのよ」



そうして、アンジェラは…アンジェラの体は、爆発して……塵になった。
優しい顔のままで、救われたという、あの顔のままで…。



「あ、あぁ…」


ゴズが絶望としたように地面に手をついた。
神田も六幻を静かに鞘に納める。


村にまた、静寂が戻る。人を失った村は、ただ荒廃するだけ。


「ゴズ…」

「分かってます…、救われたんですよね、これで…!」

「うん……」


妖艶とした彼女を照らし続けていたつきは今、残された私たちを照らす。



「…行くぞ。、ゴズ」


神田はくるりと踵を返す。
ゴズは小さく頷いて、そっと胸元で十字をきって呟いた。


「ソフィアさん、アンジェラさん、安らかに――」


私もまた、心の中でそう願う。2人とも、どうか安らかに眠っていて…。


さて、いい加減黒姫も起きただろうか、とかおもいつつ木の幹に向かえば、
今だ、ぐっすりと眠っている黒姫…。いったいどうしたのかな…

これだけの騒ぎでもまだ目を覚まさないとなると、奇妙ね…!



そう思っていると、一瞬視界が真っ白になった。



――、あのね、お店の引き出しにあなたに渡すものがあったわ。



アンジェラか、ソフィアか。その声が聞こえて振り返ろうとすると。


そこには雑貨屋しかない。真っ白な視界も本当に一瞬。



?何してんだ、置いてくぞ」

「ちょっと待って…」


私は黒姫をコートのポケットにいれて雑貨屋の中に入る。
奥に進んでカウンターの横にある棚の引き出しを開ける。


そこには1冊の本…。



「…コレは、…英語で読めん!

「アルバム、か?」

「アルバム…!も、もしやこれは!」


私は生唾を飲んだ。




そう、この展開!そしてこのオチ!…これをみんなが待っていた!!(ぇ)


私はバッとそのアルバムを開く!



「あ、アンジェラ萌えーーーー!!!!」


はッ!?な、何叫んでやがる!!」



そう!これは店主さんの秘蔵、アンジェラのコスプレ写真!
まさか、これを私に託してくれるとは


…ありがとうアンジェラ!

久々に、腐女子魂萌え滾るよ!!キャァア!


メイドナース、おぉこれ赤ずきんちゃん?違和感ないよ!」

…いい加減にしろおい!」

きゃぁあ!男装してるものまであるよー!!カッコイイ!カワイイ!萌えぇ!!



神田が私の襟元引っ張ってるが、こうなりゃアンタの存在は無視だ!



「ちょ、さん!何してるんですか!」

「ゴズ!お前もコイツをどうにかしろ!」


ゴズが雑貨屋に入ってくる。
チクショウ、お前まで私の楽しみを奪うか!


「神田さん…分かりました!さん…神田さんも見たいそうですよ!

あぁ!?テメェふざけんな!俺は、んなこと言ってねぇ!!

「ちなみに俺にも見せて下さーい!!」

「ふっよかろうゴズっち。もうッユウちゃんの照・れ・屋・さんッ☆
 見たかったんなら最初から言えばよかったのに…。あ、ちょっとゴズ!なに一枚とろうとしてるのー!!
 全部とっちゃ駄目!アルバムとして保存するのに〜!!」


その写真はしかも、ちょっとロリはいった感じで気に入った写真!ゴズってばロリコンね!!
おぅッ!これは…もはや宇宙防衛軍のコスプレですか!?バニーちゃんまである…ッ!



「「萌えー」」





ブチッ




何かが、切れる、音が、した






「「、げッ!」」


「…六幻…災厄招来…」



ゆらりと六幻を構えた神田が、私たちのうしろに!
目が光ってるぞ髪の毛逆立ってるって!ぎゃーーー!!


もう、ここは…やるっきゃヌェ…!





「あ、アハハ、仲間はずれにしたからって怒っちゃダ・メv








界蟲『一幻』ッッ!!!







お色気作戦失敗ッ!神田の下僕たちが私たちに襲い掛かってきました☆



ぎゃー!!神田の人でなしィィ!!

さぁん!!助けてくださいィ!!!!



ガバッっとゴズが抱きしめてくる!
恐怖ゆえだろうが、暑苦しい!圧迫感が…!!



ゲッ!!抱きつくなぁ!!!


ッッ、オイ、ゴズ…刻むぜ!!



その後、ゴズは吹っ飛ばされ、私は引き摺られて散々!
神田ユウ、まじで怪我してるんですかと思えるほどのキレっぷりでした。


アルバムはそのまま置いておいた。たった1枚…


アンジェラとソフィアが二人で笑って写る写真だけもらって、ね。