久しぶりのリナリーです。この私を放置するなんていい度胸よね。
腹いせに神田に呪いを…、ふふっ、私のに淫らな行為を働いたバツよ。
え、なんで知ってるって? 私はのことは何でも知ってるのよ!
彼女の喜び悲しみ、その他もろもろが流れ込んでくる…きっと赤い糸で繋がってるのよ。
だから、あのクソヤロウの思うようにはならないの。ハッ、指加えて見てやがれ負け犬めが!
そうそう。今回からコミックス3巻の時間軸の話が始まるって?
アラ、じゃあ表紙は麗しい私よね? イコール、私がヒロインよね!?
ッ違うわ! ヒロインは、そう! 彼女以外にありえない。さながら私はヒーローね、を悪漢から守る存在よ!
「リナリー! 見て見て〜!」
私の名を気安く呼ぶんじゃねぇよ、グズメガネがッ!
と思ったけど、口には出さない。だって今日は機嫌がいいもの!
もうすぐ私のが帰ってくるのよ! しかも神田は一緒じゃない!
今のうちに神田を闇討ちする計画を立てなくっちゃ!
「で、兄さん」
このポンコツは、何?
黒の教団壊滅事件…犯人は彼か彼女かロボットか!?
「だいぶ遅くなっちゃいましたね〜」
「この嵐で汽車が遅れましたから…」
どうも。ただいまマテールから帰還したです。
すごい嵐で汽車はなかなか進まない。嵐のせいで電波も届かないのか連絡も出来なかった。
…リナリー怒ってるかな。つーか、誰か殺っちゃった…!?
どーしよ。私何も出来ないよ? とりあえずこの身を捧げればいいの? それでいいの!?
「神田殿の汽車も、無事目的地に着けていたらいいのですが」
「…あ、そうだね」
ちょ、トマ! 今は神田の名前出すのは禁止だって!
私は未だに神田のあの行為が焼きついて離れないんだよォオ!!
ザ☆病室押し倒し事件! 別名、の萌え死事件とも言おう。
なんだったのさ、アレ! 今考えると本当に恥ずかしい!
でも警告だよね? あんなことしてると変態にこうされるぞ!? っていう警告ですよね神田君ン!!
何でこういう時乙女になるの! 都合のいいシチュエーション想像してんじゃないわよ私!!
「あばばばばばば!!」
「さん!? どうしたんですか、急に!」
「なんでもないよアレン氏! 決して羞恥心とか、萌えとかじゃないから! 立ち去れ私の煩悩ゥウウ!」
ドサッ
…私が叫んだ瞬間、何かが階段からすべり落ちてきました。…いやね、落ちてきたものがありえないんですよ。
あああれか、夜中に何叫んでるのこのアホが☆ って言う注意だったのかな?
じゃなきゃ眠ってるリナリーこんな所に来ないでしょうよ…!
「眠ってても黒の教団の支配者だ…リナリー!」
どこもかしこも“リナリー波”で溢れてるんだね!
リナリーの上空を、ひらひらと黒姫が舞っている。黒の気配に惹かれたか…。
「丁度いいですね。夢の中で逝かせてあげましょう」
「へ?」
「言ったじゃないですか。僕、彼女気に食わないんで…大丈夫。一発ですから☆」
そう言って星を飛ばしながらイノセンス発動させるアレン。
いやいやいや! 何が大丈夫だ! 一発って何だ! その爽やかな笑顔に隠れたドス黒いものは何なんだぁあ!?
「だだだダメだよアレン! リナリーだけには手を出さないで、マジでェエ!!」
「怖いんですか、リナリーが。大丈夫です、さんだけは僕が守りきりますから!」
「そうじゃねぇよ! 私だけじゃだめだから! 教団も守って! みんなの生活守ろうアレン君!?」
心なしか眠ってるリナリーが、恐ろしく見えるんですけどー!!
「も、戻ったかアレン、…」
「「!」」
階段の上から久々に聞く、どこか疲れきった声が聴こえた。
「リーバーさん…! って、どうしたんですか、その傷は!」
アレンが支えると、リーバーさんはすごい神妙な顔になった。
「まさか…これは、リナリーにやられたんですか!? 腹いせに!」
「そうなんですか? じゃあ、殺ってもいいんですよね!」
「いや、よくないよ? 正当化しちゃダメだよ、だれも許可してないよ…!」
本当にごめんなさい! 私たちがもっと早く帰っていれば…。
そう謝るとリーバーさんはまだ神妙な顔のままで
「に…逃げろ」
って言った。
…エスケープ?
「コムリンが来る」
「は?」
アレンがわけが分からないって顔をしてる。…コ、コムリン?
「マジ、で?」
驚きも束の間、すごい地響きが聞こえて来て…壁を破壊してきたコムリンが参上!
ちょ、ちょっと!!!
「来たぁ」
「リーバーさん!? 何でコムリン復活してるんですかァア!!」
いや、でもなんか前のとは違うような気がする…なんだろ。ってそんな模索はどうでもいい!
「アレン、逃げる…」
『ピピピピ…発…見! リナリ・リー、アレン・ウォーカー・。エクソシスト3名発見』
な、何!?
「逃げろ、アレン! こいつはエクソシストを狙ってる!」
うそぉおお!?
私は頑張ってリナリーを背負っておんぶする! それと同時に
『手術ダー!!』
イカれた音声が聞こえた!!
「追ってくるー!!!」
私たちは脱兎の如く逃げ出した! 帰ってきて最初のお出迎えがこれってどぉいうことだ!?
「リーバーさん! ワケが分かりません!! なんで僕とさんが追われなきゃいけないんですか!!」
「アレン、リナリーもいるから! で、なんでですか!!」
リーバーさんは1つ頷いて
「あれはだな! コムイ室長が造った万能ロボ『コムリン』つって…」
見ての通り暴走してる!
何で!
とりあえずコムリンの追撃から逃れて陰に隠れて状況を聞く。
30分前、残業をしていたリーバーさんたち科学班にリナリーがコーヒーを運んでくれたそうな。
そこに『救世主』と称して、コムイさんがあのコムリン…『コムリンU』を連れてきた。
コムイさんの頭脳と人格をコピーしたイノセンス開発用のロボで、イノセンスの修理とか出来るらしい。
仕事が減るってことで科学班は沸くけども…。
何故か知らん、救世主はコーヒーブレイクをしなさった後、恐れ多くもコムリンはリナリーに麻酔を打った。
そしてエクソシストを強くするべく「マッチョに改良手術すべし!」とか言い出し、暴走を始めたそうな。
……あの、一言言いたいんですけど。
アホくさっ!!
多分、アレンもトマも同じ事思ったんだろうな、あの顔は。
「…エクソシストだったんですか、彼女」
「え、知らなかったの?」
「ええ。電波で何かしてるのかと思ってましたよ。あぁ、ますます鬱陶しくなりましたよ、この女…」
「あ、アレン…」
さすがというか、なんというか…度胸があるな。
リナリーにここまで言えるのは、まじでアレンぐらいじゃないの?
「リナリーは大丈夫なんですよね?」
「ああ、大丈夫だ。眠ってるだけですから」
「よし、じゃあやっぱり眠ってるうちに殺りましょう!」
ちゃっかり、イノセンスを構えだしたアレン少年。いやいやいや!
「意気揚々と何を言ってるかアレーン!! あ、リーバーさん驚かないで下さい。
どうもアレンもリナ嬢属性です、お腹はなかなか黒く育ってしまったみたいです!」
リーバーさんは、まさかそんな…! と言ったような驚愕の表情だ。
そりゃそうでしょ、フツー。アレンは白いと思ってたもの、純粋だと思ってたもの!
アレンは「これでも譲歩してるんですよ? 眠ってる間のほうが幸せでしょう?」とか微笑みながら言ってる…!
それを聞いたリーバーさんがますます顔を青ざめさせた。
「何はともあれ…ラクになりたいと思ったバチかなぁ…」
「え?」
リーバーさんは壁にもたれてつぶやいた。青ざめた顔は、どこかやるせない表情に変わってる。
「お前達エクソシストや探索部隊は命懸けで戦場にいるってのにさ…」
悪いな。
そう謝って、私たちを見て少し疲れた顔に笑顔を浮かべて
「おかえり」
そう言った。もちろん私は「ただいま」と返したけれど、アレンはボーっとして言葉を返さない。
どこか恍惚とした表情は…何かを思い出してるみたい。
「アレン?」
私が呼ぶと、アレンははっとした。
「あっはい!」
「どうしたの?」
「もしかして任務の傷が痛むのか? 報告は受けてるぞ」
「いえっ平気です」
アレンは少し照れたように笑って「ただいま」って言った。
こういう時のアレンは、白くて可愛いのにー! お姉さんは好きよ、アレン!
「アレン、そのままでいてくれぃ」
「さん? 何か言いましたか?」
「ん? 叶わない願いを呟いてみたのさ……。それよりなんか聞こえる…」
音のする方を見ると、ヘブラスカのところに行く時に使った乗り物に乗った科学班の面々が!
「おおーい、無事かー!!」
「室長!」
「みんなも無事そうで良かった…」
ただ一名を除いて…
「リナリィーまだスリムかいー!?」
目が覚めたリナリーに滅ぼされてしまえばいい!
そう思ったコムイさんの言動。本当にイラっときたぞ、こんちくしょう!
「誰の所為だと思ってるんですか…、リナリーがどうなろうと知ったことありませんが
僕とさんの愛の育みを邪魔されたんです。責任とって下さいよ、シスコン野郎」
「ッ、あ、アレンくんが毒々しくなっちゃってるよ! リーバー班長、どゆことぉお!?」
「スイマセン、俺にも分からないんで…ッ、避けろ!」
へ?
ちょっとボケてると、アレンに腕を引かれた。見れば、狂ったコムリンが豪快に出現しおった!!
「リーバーさん!」
背中で寝てるリナリーを、とりあえずリーバーさんに預けた。
「こうなったらイノセンスで…」
「アレン、、待ってて!」
そう思ったらジョニーの声が。あの乗り物から大砲らしきものが現れた!
おお! あれならコムリンも壊れる!
「科学班なめんなよぉ!!」
「「「壊れー!!!」」」
「ナイス、ジョニー!!」
「ついでだからリナリーも逝きましょう?」
「いえ、ウォーカー殿…それはやめた方が…」
トマの制止の声で、舌打ちをかますアレン。本当に黒いですね、少年…。
ドッ
…あれ、今何か…私の真横通らなかったか?
「ボクのコムリンを撃つなぁ!!」
コムイさんがジョニーを妨害し、乗り物が暴れ馬状態!!
その状態で大砲から荒れ狂うように銃弾が放たれてる!! やべー!! こっちまで死ぬ!!
「どわわわわっ」
各々逃げるので精一杯…トマと私なんて、もう息が上がりきってますよコノヤロー!!
黒姫も心なしかお怒りのようで、牙むき出しですよ!! ティムとの時間を奪われてるんだから当然か!
「何してんだお前ら!!」
「は、反逆者がいて…」
リーバーさんの怒声におずおずと答える科学班員…いわずと知れた反逆者はコムイさん。
「班長! リナリーに当たったらどうするんですか!!」
気付けば大砲の先端に、縛られたコムイさんが立っていた。
「コムイさん! リナリーとコムリンどっちが大切なんですかッ!」
「…グスン」
泣くんじゃない、そして即答しなさい。
コムイさんの目の前にコムリンがやってくると、彼はコムリンを呼んで…地獄の一言を放った。
「アレン君の対アクマ武器が損傷してるんだって。治してあげなさい」
「え゛?」
「うぇ!?」
『ケ…ガ……』
ちこーんと、何かひらめいたような音が聞こえたけど…まさか…。
『優先順位設定! アレン・ウォーカー重症ニヨリ最優先ニ処置スベシ!!』
……何ィイイイ!?
一瞬でアレンの足を、どっからか出した手で掴み追った!
「アレェエン!!!」
私は行かせまいとアレンの腕を掴む!
『アレンヲ手術室へ連行ー!』
「ぎゃあああ! 何、あの入り口!?」
「あんなところにアレンが入ったらどうなるのさぁああ!!」
ふ、ふざけてるこのポンコツ!
頑張って引っ張るけど…機械の力には構わず、引き摺られる。
「さぁリーバー班長! コムリンがエサに喰いついているスキにリナリーをこっちへ!」
「「あんたどこまで鬼畜なんだ!」」
私とリーバーさんのダブルのツッコミが飛ぶ。
『手術♪ 手術♪ とにかく手術♪』
キモチワルー!!
さすがに気色悪さを覚えたアレンも、
「さん…離れてください…!」
イノセンスを発動させた! 新しい、あのレーザービーム。
「おおっ、新しい対アクマ武器!」
リーバーさんも新しさに沸く。あれでぶち抜けば…いけるぞー!
私はアレンにいわれた通りはなれた…ら。
プスッ
「ふにゅら?」
……What's!? 離れた瞬間何が起きたよ!?
あ、アレンが萌える位にふにゃにゃになってる…あかん、萌えてる場合じゃない!
「しびれるる…」
「ウォーカー殿!」
呂律が回らないほど、体がしびれてるみたい。な、何されたの?
「室長ぉー!!」
リーバーさんがまた怒ったところを見ると…犯人はコムイさんか!
「吹き矢なんか持ってたぞ!」
「奪え!」
「だってだって、あんなの撃たれたらコムリンが…コムリンが!」
腐ってる…あの人大人として腐ってる…! いい年こいて、中身子供かコムイさん!
「大人になって下さいよ、コムイさん!! コムリンの代わりは居てもアレンの代わりは居ない!!」
「酷いちゃん! コムリンの代わりだって居ないよ!」
いやいやいや! あれ、現に2代目コムリンじゃないかこのやろう!
「ッアレン、ちょっと待ってて! イノセンス、発動! 三龍『地』、戒ノ地!!」
床に槍を突き立てて、これ以上コムリンが内容に動けないように束縛する。
「おお、も新しい力か!」
けど…、アレンはどんどん引き摺られる…! うわっ、ティムまで連れてかれてるー!!
だめ、こうなったらアレンを標的にして引っ張りあげるしか…、そう思って一度戒めを解く。
「一龍…「リーバーしゃん…」…へ?」
アレン…?
「しゃんをちゅれて逃げてくらしゃい…あとでキョムイしゃ…殺す」
も、萌える…! でも最後の殺すだけ綺麗に言い切った!!
それだけ強い意思だと取ったぞアレン…大丈夫、きっと誰も止めたりしない。
そんなアレンを…見捨てるわけには―――。
「アレン…」
「ぱやく…」
それだけ言うアレン! リーバーさんは走ってアレンの服を掴むけど…無常にも扉は閉められた。
そ、そんなぁ!!
『アレン・ウォーカー、収容完了しました』
「「アレンンンンー!!」」
「ウォーカー殿ー!!」
3人で扉を叩く、蹴るけど頑なに閉ざされたまま!
このままじゃアレンは……グフォッ、想像できない姿にされてしまうぅう!!
「黒姫! ティムも連れていかれたから援護ォオオ!!」
私がそういうと、黒姫はコムリンの頭を旋回して…思い切り噛み付いた。
鉄を砕くような音が聞こえる辺り、相当苛立ってるよ彼女ー!
『オイコラ鉄屑ゥ…私のダーリン返せグルァ!!』
黒姫の声が聞こえる気がする…!
痛みに反応したのか、それとも他に反応したのか! コムリンは急に動き出し、私とトマ、黒姫は投げ出された。
私は黒姫を掴んで、トマを見た。
「トマ、大丈夫!?」
「ええ、それより…コムリンの標的が…!」
恐る恐る振り返ると…コムリンは私とリナリーを交互に見ている。
『エクソシスト、、リナリー・リー…手術シマス』
「私たち!?」
「ちくしょー!! 、リナリー連れて逃げろっ!」
私はダッシュでリナリーのところまで走る!
そして背負おうと思って肩にリナリーを回していると…コムリンが一気に迫ってきた! ヤバイィイ!
「マッチョは嫌だーー!!! 起きるんだリナリー!!」
影が出来た時…コムイさんの声が聞こえた。そして…ものすごい圧力を、感じた。
「キャアアアー!! リナリー! リナリー! ボクのリナリー!! コムリンのバカァ」
「室長落ちる!!」
…アレ、おかしい。背中に居たはずのリナリーがいない…どうして?
「! し、室長あれ!」
…それに、なぜか浮遊感…。
「大砲の先…あれは」
私は誰かを見上げてて…その誰かは、まごうことなき気高さを持った、
「リナリー!!」
リナリーだ!! コムイさんの歓喜の声が聞こえる。
「…どうしてこんなに、怯えてたの?」
「コムリンが、暴走して…」
「そう…あれ…」
リナリー逞しいな…黒い靴発動させないで私を姫抱きですか…。
にしてもまだ、どこかボーっとしてる感じが…。完全に麻酔が抜け切ってない?
「一番に…を出迎える予定が、狂ったの…あの、鉄屑とクソ製作者の、せいね?」
あのーリナ嬢? いつもより黒く感じるのは、麻酔のせいでしょうか…!?
冷酷さが混じってる感じがするんですけどー!!?
「イノセンス、発動…」
リナリーは静かにイノセンスを発動させた。
そして再び迫ってきたコムリンをヒラリと空中で交わして見せた。
…わぁ、ラビ・神田に引き続き…今度はリナリーと素敵な空中散歩v
リナリーは柵に降り立つと、私を床に下ろし…コムリンを見据えた。
「リナリー!! この中にアレンがい「関係ないわ」…るん、だ、けど」
未だアレンの服にぶら下がるリーバーさんのヘルプを冷たく切り伏せたー!!!
「アレン君…そう、私が居ないことをいいことに、私ので妄想し腐って…。
結婚? ふざけないで…私がを花嫁として迎えるんだから。このまま私が処刑してあげる」
コムリンという名の棺があるんだから…ふふふ。
なんか、いつも以上に黒いよ! やっぱそうですよね、これぇ!?
リナ嬢、麻酔でこじ開けちゃいけないものをこじ開けちゃったよ…! もー収拾付かないほど冷酷になっちゃってるって!!
「わわわっ!」
大砲に絡みついたコムリンのせいで、この乗り物はバランスを失っている。
滑るー! 滑り落ちちゃうよっ! どんどん科学班が投げ出されてる…このままじゃ全滅…!
「…」
「な、なに?」
「待ってて……あの鉄屑破壊したら、私が」
ハネムーンに連れて行くわ。
あ、新婚気分ですか、既に!?
ふっと笑みを浮かべるとコムリンに…一気に立ち向かって行った。
「リナリー!!!」
情けないコムイさんの叫び声を背に、ズバンッと景気のいい音を立てながら、コムリンにムーンサルト蹴り!!
それに動じないで、リナリーに向けてビームらしきものを連発させてくる。
でも…リナリーはそれを完全に避けきっている、さすが魔王様の申し子…!
「へっへ、ばぁか。イノセンスを発動したリナリーを捕らえられるもんかよ…」
胡蝶のように天空を舞い、鋼鉄の破壊力で地に墜ちる…それがリナリーの対アクマ武器『黒い靴』だ。
自慢げに話すリーバーさん。つまり、武器を得た黒の女王は…もはや魔界の女王と化すのだ!
その武器で、リナリーは…真っ二つにコムリンを引き裂いた。わぁ、残酷!
でもさ、よく見たらあそこ…アレンの居た扉ぁあ!? リーバーさんも大丈夫!?
「…アレン、リーバーさん!?」
「おー無事、だぞ、アレンは…?」
「なんとか」
そこにはアレンを背負ったリーバーさんの姿が。よかった…が。
「チッ、殺し損ねたわ」
「…リナリィイイ!?」
冷酷さが黒さをさらに引き立ててるから余計怖いです、まじで!!
もうまじで、あの冷酷な美しさは反則…、黒い薔薇が見えるもん。ついでにデーモンな閣下も見える。
閣下まで見えたら事件だね、私。
一同のぶっ壊せコールをバックに、リナリーは私に微笑みかけた。
「…無事? 貴方が無事なら、それで…」
「私は平気、だよ。疲れただけ…リナリーは?」
「大丈夫よ…ありがとう、優しいのね。でも……許さない」
またすぐに冷たい眼をして、コムリンを見る。
いつの間にかコムリンの前に、コムイさんが立ちはだかっていた。
「待つんだリナリー」
「げっ、コムイさん! いつの間にそんなところに!」
「コムリンは悪くない、悪いのはコーヒーだよ!」
「アンタ…!」
よじ登ってきたリーバーさんも呆れた顔をする。
とりあえず、私はリーバーさんに手を貸してこちらに移動させた。
だって、ね。なーんか嫌な予感が…。
「罪を憎んで人を憎まず、コーヒーを憎んでコムリンを憎まずだ、リナリー」
これで解決だとでもいう表情のコムイさん。微妙に慈愛に満ちてるのが、なんかムカついた。
私は立ち上がって、リナリーの後ろに立った。
「兄さん、言わせて貰うわ。私、今…不機嫌なの。コーヒーを憎む? そう、私が淹れたコーヒーを憎むというのね。
じゃあ一生その鉄屑と戯れてればいいわ、引きこもり生活のスタートよ。嬉しいわ、二度とそのツラ拝まなくて済むんだから」
「リナリー?」
「私からも言ったじゃないですか、リナリーとコムリンどっちが大切かって!
結局はこうなる運命です、分かってたんですよ誰もが。リナリーは不敗の女王…コムイさん!」
「、ちゃん?」
私は槍を、リナリーは脚をそれぞれ構えた。
「「ちょっと反省して来い」」
リナリーがけり落としたところを、重力による二重鉄槌で叩き伏せた。
コムイさんは「あーれー」とか言いながら、コムリン共々…風となった。
「なんだか、もう…」
疲れた。
騒動が鎮火し、とりあえずアレンは談話室のソファで休ませることになった。
みんなで壊れた箇所を見直し、総出で直すことになった。でも、麻酔が完全に抜けたこの方は…。
「…、いきましょ」
「え、どこに? 片付けの手伝い」
「いいの! さぁ」
ハネムーンは何処がいい?
冗談じゃなかったんだ!!
リナリーは意気揚々と、旅行雑誌的なものを読んでるんですけど!!
ってかこんなところにもあるのかその本!
「リナリー! ちょっと悪い、黒の靴で天井のほうを見てきてくれないか?」
リーバーさんが、凄く疲れた顔で談話室にやってきた。
コムリンの所為で壊れた箇所の把握に、リナリーの力が居るという。でも、リナ嬢は断る。
「嫌よ、兄さんのせいなんだから関係ないわ」
「リナリー…でも、これはリナリーにしか出来ないと思うなー」
「…3分以内で終わらせてくるから、待っててね!!」
すると、ウル○ラマンの如く空へと舞い上がるリナリー。
リーバーさんはそれを見送ると、私にお礼を言って戻って行った。
さて、と。アレンのタオルをタオルを代えようと手を伸ばす。
「ん…、さん…」
が、それより早くアレンが目を覚ました。
「あ、起こしちゃった?」
アレンはしばらくぼーっとしてたけど、すぐ体を起こした。
「コムリンは、どうなりました!?」
「大丈夫! もう終わった」
「そうですか…。では…コムイさんを殺しに行かなくては…」
「そ、それも大丈夫! 私とリナリーで伏せたから!」
「…リナリー、ですか。癪ですね、あの人に助けられたとは…」
いやいや、あちらも殺す気満々だったよ。2人とも気付いてたな、お互いの腹黒さ…。
腕を見る限り、マテールで受けた傷も治ってる。
「怪我は治ってるみたいでよかった。一応コムリンが治してくれたんだね」
「そうですね、包帯で束縛と言う…SMプレイをさせられましたが」
「アレンの口からその言葉は聞きたくないよ、お姉さんッ!」
「いやだなーさん」
これは、僕の心からの願望ですよ? さんになら、縛られてもいい、っていう。
いやだ、そんな願望は捨ててぇ!!
お願いです神様、純粋な子犬みたいなアレンをもう一度!
「そう! イノセンスも無事だったみたい…ティムは黒姫とソコで踊ってる…。
あとー…アレンの部屋! めちゃくちゃになっちゃってて…私の部屋もなんだけど」
「さんの部屋も? そうですか、仕方ないです。この際ですから僕たち同棲しましょう」
「どの際!? いやいやありえないからね!?
そのー…神田の部屋の隣が空き部屋で、そこに私は移ることになったの。もともと神田の2つ隣の部屋だったんだけど…」
多分、男と女だからっていう配慮があったんだろうけど、任務とかあると部屋にも長居するわけじゃないし…。
っていうか、隣でも問題ないよ、ウン。壁越しになにやら声が聞こえても平気だー!
そう思いつつ、黙ってしまっているアレンを見る。
「かん、だ…!?」
ブワッとなんか黒いオーラが噴出してるんですけどォオオ!?
「なんであんなカマ野郎のお隣が貴方の部屋なんですか。もともと近くだっただけで腹立たしいのに…!」
「そんなことリナリーも言ってたな…懐かしい」
「いやです、だめです、許しません! さんは僕の伴侶ですよ!?」
僕以外の男の隣なんて合っていいわけありません!
熱弁してるところ悪いけど…誰がいつ伴侶になったんだろうかアレンやーい。
「そうだ、今から神田の部屋を完膚なきまで破壊しましょう。ちょうど奴は任務、ふふふ。コムリンの所為にしてしまえば万事解決ですよね。
それで何か言ってきたなら、あの長髪引っ掴んで崖からつるして晒し者に。
最終的には毛根まで抜けきって、歩くのも恥ずかしくなるようにしてやらぁー、…さん、ちょっと僕散歩に」
「行かせるくわぁああ!!」
魂胆丸見えですよ! せめて隠そう!? いや、隠したからってしていいわけじゃないけどさ!
毒が口から吹き出てる! オーラがどこからともなく溢れてる!!
「ー!! 貴方の為にマッハで終わらせて…あら、目が覚めたのねアレン君。そのまま目覚めずに黄泉へと送ってやろうと思ってたのに、残念だわ」
「それはこちらの台詞です。お互い化けの皮が剥がれましたね…いえ、貴女は既にその醜い面を晒してましたか。
あー吐き気が、貴女のその顔を見ただけで黄泉に行きそうです。十分その顔は武器ですよ。最終兵器ですよ」
「ガキには分からないのね、私のこの美しさが…ッでも、には負けるわよ、これ本当だから!」
いや、別になんだっていいんですけど。っていうか、このブリザードをどうにかしてくれません!?
黒対黒、冷対冷…もはやここに恐怖の世紀末が訪れてます…ヘルプー!!
「り、リナリーは美人だよ、ウン! だから――」
「ふふっありがとう。…だってよ年齢不詳、下半身だけで生きてきてる白髪野郎が。
は私を選んだみたいだから即刻立ち去れ。天パとでも鉄屑とでも戯れてればいいわ」
「嫌ですよ。貴方の顔にモザイクかけて下さい。その自称美しいという顔を見えないようにしてから消えてください。
黒の教団からとは言いません、この世から抹消して下さればいいんです」
「あー!! もう2人ともストップストップー! 私疲れたから部屋に戻る! アレンもリナリーも疲れてるんでしょ、今は休もう? それにリナリー…」
任務が一緒になったら、それで旅行気分味わえるんじゃない!?
それもそうね!!
「じゃあ早速兄さんに脅し…ウウン、掛け合わなくっちゃ!」
「ぎゃー!! 地獄見せた後這い上がってきた彼をまた地獄に送る気だよあの子ー!!」
「何言ってるんですか、僕が先ですよ! エセアイドルが出る幕じゃありませんね」
「ふふふ…言うじゃない、青二才が。そんなに私のイノセンスの餌食になりたいのね?」
「いえ、寧ろ貴女がそうなんじゃないですか?」
「「…イノセン」」
「やめーーーぃ!!!」
今日思った。
私、絶対この2人とは任務行きたくないッ!!