今日、また何人かの奴等が死んでいった。


奴等は弱い、俺たちと違って倒す力がないから。


だが、死んでいった奴にとやかくいう事もない。


『弱かったから死んだ』


その事実は変わらない。


俺と任務を共にしていた奴も、死んだ。


「どうして守らなかった!?」


そう罵られたが俺は無視をする。


目の前にアクマが神の力を奪おうとしていたんだ。


「それを優先するべきだろ」


そういうと、目の前のやつは泣き崩れて言った…。


俺は、泣かない。任務のためなら、犠牲を厭わない。





確かに、そう思っていた。








ぶっ飛んでみた







とにかく、今日の気分は、運勢は、最悪だった。
もしかしたら一生のうちで一番の厄日だったんじゃねぇのか!?
と思うぐらい最悪な日々だった。

お弁当を家に忘れてくるわ、抜き打ちテストにあったうえ0点とるわ
クラスでのんびりしていたらボールが飛んでくるわ、
場所変えて図書館行きゃ、頭に本の山が降って来るわ…。
極めて帰りは大雨で、朝はめっちゃ晴れていましたやん!と思いつつ
傘もささずにダッシュで帰っていると見知らぬ車に水掛けられましたがね。

知ってるか、ナンバー覚えてるとお金請求できるんだぞ!

まぁそんな記憶能力ないけどね。


「あーもう!早くシャワー浴びたいよ!寒いよ!死んじゃうよ!」


まだ雨の振る中、私に希望の光!自動販売機がある!
あったかーい、ココアが私を待ってる!


「もうこの寒さには耐えられない!ココアを買います!えぇ貴方様を買収します!


といいつつ、鞄から財布を取り出し、パカリと開ける。


「…」


そして自動販売機を見ると、ココアは100円。
財布の中身は…10円玉9枚と5円玉2枚、合計は100円。
もう一度自動販売機を見てみよう、対応しているお金は10円玉から。


「ふっざけんなー!なんで消費税では欠かせない5円玉対応させてないのさ!
 くぅ、自販機作った会社にいつか訴えてやる!つか呪い殺してやるぞ!


と、自動販売機に指差してキレても意味がない。むしろ周りから見ればすごく痛い子。
あぁ、もう!本当に今日は運が悪い!

寒さに耐え切れず、私はまた走り出した。








「で、鍵がないなんてオチあっていいの?おい、あっていいのか!?


あっちゃいかんのに、あってしまった。案の定家を目の前にして、鍵がない。
鞄ひっくり返しても、鍵らしき銀の物は出てこない。
お母さん、今日に限っていつもより遅いって言ってたような、言ってなかったような。
いや、言ってた。「今日はお友達とバーゲン行って帰るわv」とか言ってらっしゃった!

こんな時、ドラ○もんがいてくれればいいのになッ☆

そんな非現実的な事を考えてる暇があったら、どう時間を潰すか考えようか私。
とりあえずさっきひっくり返した鞄の中身を見てみると、
さっきの憎たらしい財布のほかに、絆創膏などがはいった救急セット、携帯、鏡…

そして、友達に借りたアニメ雑誌。
なんかあるマンガがアニメ化したから、マンガ買って読んで見なさい!とか言ってた。
じゃあ、そのマンガを貸してくれ!100円じゃとても買えない。

それよりよかった、雨に濡れてなくて。雨に濡れてぐちゃぐちゃになってたら
友達にぶっ殺された☆確実にネ!

暇つぶしに読んでみようとペラリとページをめくると特集ページが!
「D.Gray−man」…聞いたことはあったような…。
キャラの大まかな説明とかが書いてあって
一瞬にしてアレンリナリーって子に萌えました。ストライクです


「話がよく分からないけど、可愛いからそれでヨシ!グッジョブ!
 あと眼帯がラビ、で―…この目つき悪いの…神―」


と、そのキャラの名前を呟こうとした瞬間、雷が落ちました。


「おー怖い怖い!」


まぁあまり怖くない、遠いもん。さすがに此処に落ちれば怖いけどね!




「あーなんか、疲れたかも」


大雨の中走って、今日は散々な一日だったんだから…少し休みたい。
どんどん瞼が重くなる…一度目を閉じる、すると雷鳴と一緒になんか聞こえた。


(来い、選ばれ…使徒よ)


誰、なにそれ。使徒ってなんだ?新手の宗教団体ですか。お断りです。
私はただ眠りたいのですよ、邪魔しないでよね…。

そう思いつつ目をちょっと開けてみるけど、傍に人なんていない。え、空耳?


一度立ち上がろうと、足に力を入れようとしたけど。


「何、コレ」


足が動かない、ううん体全部に力が入らない!どうして!
焦る気持ちが在るくせに、私は眠気に襲われていく。


(お前は…選ばれし神の使徒なんだ)


最後にまた、その声だけが聞こえ、私は完全に眠ったみたいだ。












私は、まるで海に漂っているような感覚に襲われていた。
だけど濡れている感覚もない、海じゃないの?
いまだ体は動けず、感覚だけが正常に働いていた。

目も重くて開けれない…。

つか、ほんとなんなの?夢にしてはリアルな感覚…。乗り物酔いでもしたの?
もしかして酒でも飲んでよっちゃってる?とりあえずそんな感覚。


(夢でも、酔っているわけでもない。これは現実だ)


現実?


(そうだ、現実だ)


つかこの人、人の心覗いちゃってるよ…


(いまなら目が覚ませるはずだ、目を開けてみろ)


なんなんだ…。目をあけて目の前に変な人がいたら110番に連絡しよう。
そう思って目を開けてみると…



変な人がいました。


ひゃ、110番!!って携帯がナイ!何処にもないー!!!

「驚くのも無理はない。突然こんな所に来てしまったのだからな」

「私が驚いてるのはそこじゃない!アンタどこの異宗徒ですか!
 怪しさ満点な仮面、変な帽子、髪の毛!そんな宗教の勧誘は、絶対お断り!


極めて手にはなにやら不思議なトンカチを持ってらっしゃいます。
違うこの人、異宗徒なんかじゃない。唯のチカン、変態


「大丈夫だ。俺は怪しい奴じゃない」

「んな格好で言われましても、説得力の欠片も感じない!」

「気にしたらそこで終わりだ」

「寧ろ終わらしてやって!」


誰ですか、まじでアンタ誰!


「お前と同じ国の人間でないことは確かだ」

「は?」

「俺がお前を呼んだ。このイノセンスの適合者であるお前を」

「のーせんす?貴方のコトだね!

イノセンス、神の結晶だ」


あ、スイマセン。だってそんな格好で歩かれたら私の常識上センスがない判断するよ。絶対!


「で、なんの宗教の勧誘なんですか?」

「宗教、違うな。俺は黒の教団というところに属する人間だ」


ちらっとこの人の着ている服の左胸に目をやると、なんだか銀の十字架が見えた。
それに黒基調の服…まるでキリスト教。


「そういえば名前を聞いていないな、

「そう言えばいってない…ってもろ知ってんじゃねぇか!?

「…さて、これからについて話す。1度しか言わねぇから良く聞け」


知るかよ。
と思いつつも、なんとなくこの場所に興味を感じた私は大人しく聞くことにした。


「さっき言った、お前はこのイノセンスの適合者だ」

「適合者?」


仮面男の手には、光り輝く物体があった。
淡い輝きを発するそれは、とても綺麗で思わず見とれてしまいそうになる。


「綺麗…」

「このイノセンスを扱うことのできる人間の事をいう。そして、お前はこれを駆使しエクソシストとなる」

「エクソ、シスト」


やっぱ宗教じゃねぇの!と一瞬思ったが、はっとさっきまで私がとっていた行動を思い返す。
雑誌を読んでいた時に、この人の胸の印を見ていた!

ここは、あの世界だって言うの?勘弁して!


「エクソシストとなり、AKUMA(アクマ)を破壊しろ。そして暗黒の3日間を防げ」

「ちょっ悪魔って…本当にいるの!?」

「お前の知っているそれとは違うだろう。アクマは兵器だ」

「兵器…」


宗教じゃなく、戦争だって言うのか。めちゃくちゃじゃん!ココ!


「アクマは死んだ人間の魂を動力として動き、人間を襲う」

「死んだ人間の魂を…!?」


信じられないことばかりで頭が混乱していた。
だってそうでしょう?眠気がさめれば謎のエセ仮面修道士がいて
イノセンスとかエクソシストとかアクマとか、謎の宗教用語を並べられて
あ、今バカだと思った人…でて来い!ケンカなら買ってやるよ!


「人々の悲しみが、製造者を呼ぶ」

「兵器の…アクマの製造者って事?」

「名前は千年伯爵だ、そいつがアクマを作っている」

うわーもろファンタジーキター…


もう頭がパンク寸前ですよ、おじさん。

あーなんか非常に疲れた。元から疲れてたのに2倍だ…。
これも全部この変態の所為よ…!


「とにかくお前はこれに触れろ」


エセ仮面が私の手を掴む。なんつーかこの人適当だ!無理やりだ!


「私を呼んだのは貴方でしょう!責任持ってちゃんと説明―」

「呼んだのは俺じゃない、神が呼んだ…そしてこれがお前の運命だ」

最初に自分で呼んだって言ったくせに!コノヤロウッ


言い訳?前言撤回か?コンチクショウめ!
そんなこと考えている間にも、奴は私の手をぐいぐいと引っ張っている。
一生懸命拒絶をしては見るものの、大人と子供、男と女の力の差で無駄な抵抗だった。


「ちょっとマテ、マジで待て!」


あっという間の出来事だった。
エセ仮面の持つ光の塊に、私の手が触れてしまった。
ちょっとだけ温かいそれは一瞬強い光を放ったけれど、すぐに収まった。

いったい、何だったんだろう。アレか、ドッキリか!


「…」

「…ふ」

「何笑ってんですか?何処を如何見て笑ってんですか!?何にも変わってないじゃないですか!」

「本当にそうだろうかな」

「?」


仮面の奥から除き見る、怪しい微笑みの視線に釘付け☆というのは嘘で、
その微笑み携えて、血塗られたトンカチを構えてやがります。


「な、そのトンカチで何する気!?

「案ずるな。目を覚ましたら分かることだ」

「説明しどころがずれていんぞ!?人の話は正しく理解しなさい!」


ジリジリと後ろに下がれば、奴は前に進んでくる。
一進一退の攻防戦の末、私は壁らしきものにぶつかった。…追い詰められたか!

ニヤリと笑われた気がし、それと同時に背筋が凍る。
はっとうえを見上げても、これまた怪しげな像が月明かりに照らされていやがります。
その像が持つ槍の先端が輝いている!不気味!

ここ、本当に何処だよ!











ガンッ







「…あ…」


頭に、鈍い痛みを感じる…。これ、チョーク受けで頭を打った感じ。。。







―――クロス・マリアン。それが俺の名前だ、。。。






それから、ちょっとだけ目が開いた私の目が最後に捉えたのは
月明かりに照らされた…銀色に輝く槍だけだった。



+++++++++++



「……おい、起きろ」


まだ、頭が痛い。母さんや、娘は昨日の厄日が祟って頭痛を引き起こし学校は休むって方向でお願いします。
なんてったってその後、謎の異宗徒さまに出会って勧誘されて、変な言葉並べられて
光の物体触らされた上、血塗られたトンカチで迫りやがって…
あ、この頭痛…さっきのトンカチじゃぁねぇのか!?


「…起きろと言っている…さもないと、斬る




きる?



キル?



kill!?



「これ以上頭痛の種を増やすなぁーーーー!!」


起き上がると同時に、私の華麗なるキックが、お相手の腹部を直 撃☆


ぐほぁ!


相手はそれをモロにくらって、空に綺麗な放物線を描いて…地面に落ちた。


「人をトンカチで殴っといて、殺すつもりかアンタ!!」

「ッ…訳の分からないことを言ってんじゃねぇ!」


お腹をさすりながら、奴(?)は立ち上がる。
あのときは暗くて分からなかったけど…なんだろうここ?像しかないじゃない。



つか、こんな声してたっけ?なんか違うような…というより悪趣味な髪の色は何処へ?
目の前には、青みかかった黒髪をもった日本風のチョイときりっとした目がグッドな青年が。


「…………誰?

「テメェ…ッ!人を蹴り上げておいて第一声がそれとはな…


ちょ、チョチョチョッ!目の前の青年は背から刀を出して構えてらっしゃいます!
あの血塗られ(以下略)も怖かったけれど、こっちもこっちでリアルに怖いです!
お兄さん、ちょっと待ちなさい!


「その刀でどうする気!?」

「刀じゃねぇ…六幻だ!!

「どこをどうみても刀だろ、それは!というか、刀…『むげん』を下ろして!
 あーもう!何がなんだかさっぱり!クロスって人は何処に行ったのよ!」


ピタリ


仮面野郎が最後に呟いた名前を出すと、青年は動きを止めた。
もしかして、これは魔法の呪文だったのか…!


「お前、今なんて言った?」

「は?えっと、クロスって人何処に―」

「クロス元帥の知り合いか?いつあった?何を目的に?」

「あー一気に質問しないで!ただでさえ頭が混乱してるのよ!まず、刀!下ろしてよ、危ない!


私を一睨みして、舌打ちして刀を下ろす。ちょっと安心。
得体の知れない場所で、誰が死ねようか、コノヤロウ!


「知り合いといえば、知り合いではないが正しいわよ。会ったばかりなんだから」


というか呼び出されたの方が正しいね、さらにいうなれば強制的に絶対。


「あと、いつ会ったかは…分からない、いつの日かの夜が初めてよ。
 目的はよく分からないけど、イノセンスがどうとか…適合者とか」

「適合者?誰が?」

私が


…おい、青年よ。何、その疑いの眼差しは。
だって、何も知らないよ!いきなり呼ばれたと思ったらそう言われたんだからNE☆
文句は全部あの変態に4649☆(死語)


「じゃあ発動してみろよ」

「はつどー…?って何?」

「…馬鹿か?」


貶される必要性はないと思います、お兄さん。


「あのねぇ、詳しく説明されてないんだから!分かる訳無いでしょう?
 だいいち、貴方よりは知能あると思う」

「なんだと?」

「その刀―」

六幻だ!

「ホラ、ね」


勝ち誇ったように笑ってやった。つか、この人お顔……なんだか見覚えが。

何処で見た…?


「なんだ、急に黙りやがって…」


ぼやけた脳内が鮮明になっていく、そうだ、この人の名前は…





「か、かかか…」

「あ?」


そうだ、この人は―…


神田…?


そう呟いた瞬間、また刀を喉もとに突きつけられる。


「…テメェ、なんで俺の名前を知ってやがる?」


どうやらBINGO〜〜!!
でも名前だけで刀突きつけられている私っていったい!?
どれだけ目の前の青年――神田は、キレやすいんだ!
え?お友達並に愛着もっているらしい刀をか弱い(自称)乙女(ヲトメ)に突きつけて
よろこんでいるのですか?Sですか?ドSですか?そんなプレイをご所望なんですか!?


「ッッ…私は未来からやってきたドラ○もんだからよ!

「意味が分からん」


苦し紛れに言った言い訳をバッサリ斬られてしまいましたよ☆


「言え、クロスから聞いたのか?」


今更それ言っても、この人のちっさい脳みそを持ってしても信じてはもらえないだろうね…。
どうする私!どうする悲劇のヒロイン


という、私の脳内パニックをよそに、その恐ろしい目つきで神田は私を睨む。
刀は私の喉元で怖いぐらい綺麗に輝いている。

あぁ、もう…なんで私がこうならなくちゃいけないの?


「…んで」

「あ?」

「なんで私がアンタに刀突きつけられないけないのよ!!
 つーか、私は何もしてないじゃん!普通じゃないけど、厄日をなんとか乗り切って
 疲れた体を、家の前で癒してただけじゃん!某アニメ雑誌を読みながら!
 そりゃ、周りは私を痛い目で見てるよ!腐女子だーとかさ!そうよ、私は腐女子よ、悪いか!!
 話しずれた!なんやねん!ちょっと悲しくなったぞ!ゴルァ!
 とにかく、いきなり訳わかんない場所につれてこられて、最終的にトンカチで殴られるわ…
 人が目を覚ませば、刀突きつけられて…意味不明…なんなの…」


あぁ、これは有る意味泣き脅し大作戦?
なんだか涙が零れてきます。だって女の子だもん!(必死)

さすがに泣かれて困ったのか、刀下ろしていらっしゃります。


「……じゃねぇよ」

「何よ?」

「泣くんじゃ、ねぇよ。面倒くせぇ」

「……はひ」


なんだ…この人、なんか萌えを感じた……!ツンデレなのね!君!
なによ、さっきまではこっちの意見はまるで無視で、思いつくままに馬鹿っぷりを見せ付けてくれたくせに♪

とりあえず無駄に流れてきた涙は止まった。
さて、これからどうするんだ?


「…とりあえず、そのイノセンスは何処にあるんだ?」

「へ?そのクロスって人が手に持ってて…そっから覚えがない」

「…どういうことだ?」


神田は私を見てもう一度聞く。


「さっき、言ったでしょう?思い出したくもないけれどトンカチで殴られたって。
 そこからの記憶がないの。イノセンスというのがどうなったのかさっぱり…」

「だが、確かにお前が適合者だとは言ったんだな?」

「うん、それは確かよ。イノセンス…なんか光の塊に触った覚えはある。急に光ったのも…」


そうか…と、神田は何か考えるように周りを見渡した。


「イノセンスは消えずにあったのか?」

「うん」

「だが、そのイノセンスはお前が適合者…つまり、何らかの形でここにあるはずだ。
 寄生型ならとっくに消えて、お前の体が変化しているはずだからな」

「うわ、なんかそれはイヤだ


よかった、その寄生型っていうのならなくて…。
体の一部が変わるとか…なんか怖いじゃん!
ほら、爪が異常に伸びてるとか…髪の毛が赤くなるとか……ってこれクロスじゃん。


「……ん?」


いつの間にか、人が集まりだした。


「ほら、神田が騒ぐから…だめじゃん☆」

「何で俺になるんだ、この馬鹿女!」


…まぁ、とりあえずスルーで!

でも集まってくる人々は、ただ黙って私たちを見ている。
な、何その熱線…!そんなに私が可愛いからって見つめちゃ駄 目 よ♪

という冗談も虚しく、神田は人々を睨み続けている。


「…神田?」

「下がっていろ、こいつら…様子がおかしい」

「はい?神田何言ってるの、ついに馬鹿もいきすぎて大馬鹿に…」

「……」


黙殺ですか?突っ込みももうナシの方向なんですか?
私の素敵なジョークも、−45度にぶっ飛ばされるんですか?

神田は集まってくる人を睨み続ける。いやだからさ、なんなのよ。人じゃないのさ!





「ゴメンなさい…私とこの人が五月蠅かったんですよねぇ…………!」








その瞬間、1人の口から突き出た銃口…そして放たれた銃弾。

私は何が起こったのか全く分からなかった。


銃弾は私に飛んで来る!
あーあれは避けられませんな…自分諦め早いからNE!

そう思ってギュッと目を瞑り痛みに備えた。









だけど私に来たものは…傷みじゃなく人の温もり。









目を開ければ、荒い息をしている神田がいた。
あ、ちょっとなんかこの顔萌える…。ってそんな場合じゃない、神田が助けてくれたんだ。


「ッなんで避けねぇ!」

「いや、避けられないかと思って」

「死にてぇのか!!」

「さっきまで斬るとか言ってたくせに何を…。
 死にたくないに決まってる、だからありがと。助けてくれて」


礼をいうと、神田はそっぽ向いて私を降ろした。
「目の前で死なれると困るんだよ」そう言って。
君、ツンデレ認定です!オメデトウ☆私、萌えた!ちょっと君に萌えを感じた!


で、問題ですが。さっきのは何?びっくり人間だったのか!?口から銃口とか…
有り得ない!


「何あの人…新手の芸人?

「そんな訳あるか…アクマだ」

「……アクマ?」


そういえばクロスが言っていたような…アクマは兵器だって。

周りにいる人たちはみるみる姿を変えて…なんだか風船みたいに膨らみ、たくさ
んの銃口を体につけたような生き物…兵器になった。


「とにかく、お前はそこから離れるんじゃねぇ」

「言われなくてもそのつもりよ!もー寿命これ以上減らしてたまるか!」





そう言った時、神田が…笑った気がした。





「……行くぞ六幻…イノセンス、発動!」


神田が刀を構えそう呟きながら、刃の部分に指を滑らす。黒い刃は、銀を帯びだし…淡い光を纏った。


そう、この光に私は触れた。


「災厄招来…界蟲『一幻』!


刀を横に振れば、その軌跡から妖怪がでやがりました
専らこっちの方が今は怖い。君、そういう類の人間だったのね!

とにかくその妖怪はアクマに向かい、それを倒した。すご!感動しました!

アクマはそれから神田に斬られ、倒されていき…全部いなくなった。


「…終わった?」

「だろうな、気配はない」


すっと刀を仕舞う神田に安心を覚えて、私はほっと一息つく。
なんつーかエクソシストってすごいな!私には無理だ、諦めよう!

だけどこの青年がそう易々と返してくれるはずも無く…。


「おい、イノセンスを捜すぞ」

「まじですか」

「さっさと見つけ出して俺は帰る!」


それだけ言うと、私に早く来るよう命令しやがりました。
まぁ、いいさ…助けてくれたのはこの人だってことは事実だし、このツンデレはイケル!






「お前は装備型だ。絶対この場所のどこかにイノセンスがあるはず…」

「装備?あぁ、何か武器を持ってるって事ね!」


さっすが私!ちゃんと学んでます!


周りに武器といえるものなんてこの広場にある、像の槍ぐらいでしょ。
ずっと思ってたけど、怪しいし。


「ねぇ神田、この槍――」

「ちっ、いったい何処にあるんだ」

「ちょっとーこの槍はー?」

「それらしいものが見当たらねぇ…。クロス元帥はどこにイノセンスを?」


…私の言葉を無視してるのか、聞こえていないのか、さらには馬鹿なのか。
まぁとりあえず。


人の話は聞こう、神田少年

「あ?」

「あ?じゃねぇ!さっきから私は言ってたわよ!
 私の意見は一切合財無視ですか、それとも発言する権利がないのか
 答えはひとつ!君が馬鹿なんだ!

「てめぇ、俺が馬鹿だっていってんのか!」

「いやさっきモロ言ったし!あーもう、いいって…
 とにかく、この場所で一番怪しいのはどこをどうみてもこの像だってば」


それを言った時、神田の目は見開かれ驚いていることが丸分かりだ。
君の瞳には愛する刀しか映っていないのかね?ん?

その話題から逃げるようにさっさとその像の槍を取り外そうとする神田。


「いいのかなぁ、これだって持ち主はいるはずでしょ?」

「此処の様子を見れば分かる。アクマに襲われて廃虚と化しているぜ?」

「…そう」


なんだか、虚しいな。
だって人間だったじゃない。人間に化けているんだね、アクマってのは。
奇妙なのか、怖いのか…。よく分からない感情が私の中をぐるぐるとまわってる。



ズガ、ドスッ!!!


とか、ちょっとシリアスな考えしてたら、なんか凄い轟音が聞こえた。
その方向を見れば、あの槍が地に深く刺さって(めり込んで)いる…
取り外そうと奮闘していたであろう神田の顔は、顔面蒼白



…こんな重いやつ、持てんのか?

「…腕取れたらどうしよう」

「あり得るかもな…。とりあえず、持ってみろ」


なんか、あの夜見たときより汚い。まぁあの時は月明かりで綺麗見えただけかな。
絶対、重そう!なんか重そうだ!でも触らないと何も始まらないか…。


「…ふぅ」

「長い」

「ウルサイヨー!私にだって緊張ってものがあるんです!
 いくら女らしくないからってそんなこと言っちゃ駄目だよ、神田青年」

「自分で認めて、虚しくねぇかよ。早く持て」


…ここの人間はみんな、適当な奴みたいです。クロスとかクロスとかクロスとか

私は意を決し、槍に触れて…持ち上げてみる。


「……………軽いじゃん!」

「嘘付け!怪力女!」

「だって、ホラ!」


私はそれを神田に手渡す、だけど神田は顔をしかめて
「お前の体重ぐらいはあるぞ」
…それは重いと判断してよさそうです。ちょっとムッときたけど。


「…でも、なんか色が違う…。私が最後に見たときは銀色だったもん」


確かに銀色だった感じしたのに…今はくすんでしまった銅みたいな色。
あの輝きは何処!?どこやねーん!


あのすばらしい、愛をもう一度♪

「何歌ってやがる…気味悪い、お前が怪力そうにはとても見えねェ
 クロス元帥の言葉もある。とにかく、お前が適合者であるに間違いないと見ていいな」

「で、これからどうなるの?」

「とにかく本部に戻る。その前にコムイに連絡を取らねぇと…」

「本部?」

「黒の教団のだ」


そっか、だから神田もクロスと同じ左胸に十字架みたいなものをつけてるんだ。
黒の教団…なんか名前的にすごい怪しい雰囲気!


「…そういえば、私は貴方の名前を知っているけど君は知らないよね?」

「んな当たり前のことを今更ぬかすな」

「じゃあ、改めて、。よろしく!」

「………」


私の名前を言って、神田は私の顔をじっと見た。
な・なによ…上から下まで見回して…この、ツンデレ王子☆
ってそうじゃない!


「なんなの?」

「お前……もしかして日本人なのか?」

「……はい!?」




正真正銘のBAKAが此処にいました。



「…アンタねぇ!私日本人顔でしょう?どう見ても!」

「チッ!うるせぇ!この場所に日本人がいるなんて考えられるかよ!」

「ハハハ!やっぱ馬鹿だ!バ神田だ!

「ッ…六幻!


ゆらりと刀構える神田から逃げ切ることができるか!
それより私…





何気にこの世界を楽しめそうです。