拍手SS(2009/09/16〜2009/12/24)
夢主設定:D灰…異世界からの使徒


パロディー・パーティー桃太郎!
(ALL:D.Gray-man)


むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがすんでおりました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に……


もうこの先分かりきってるだろうから飛ばして飛ばして。


桃太郎じゃなくて、桃子(仮)、大きくなりました。



「おじいさん、おばあさん。ちょっと身のほど知らねぇ鬼どもに、本物の地獄を見せてくるわ



黒のオーラをまとった桃子――リナリーは、
そうおじいさんとおばあさんに言い残して鬼ヶ島に向かおうとしていました。


リィナァリィー!!

「うるさいですよ、室長……じゃなかったじいさん!」

「うぅ、だって、だって可愛いリナリーがぁあ!」

うるせぇジジイ、引っ込め


そう言って桃リナリーは呼び止めようとしたおじいさんを宇宙の彼方へ蹴り飛ばしました
おじいさんは天命を全うすることなく、星になってしまったのです。


「ちょ、リナ……まぁいい、これきび団子だ。旅の途中で食べるんだぞ」


おばあさんは旅立つ桃子にきび団子を渡しました。
桃リナリーは鼻で笑ってそれを受け取ると、旅立ちました。


「……鬼もかわいそうだな。瞬殺されるぞ」


おばあさんは鬼に同情し、合掌するのであった。


さてはて、桃リナリーが森に差し掛かると一匹の犬が飛び出してきました。
犬の身なりはかなりボロボロで……それでも表情は歪んでいました


なんで僕がリナリーにこびなきゃいけないんですか


犬アレンは、そう毒気付きました。桃子は勝ち誇ったように笑い。


「そういう役だからよ。さぁ、跪け下郎が


そう言いました。


「フッ、食い殺しますよ? 桃なんて似合うわけも無い女が

「何を言っても聞こえないわ。犬の言葉なんて

「「………」」


話が進まないので、まちきれなくなったのか、
今度は空から雉が舞い降りてきました。


「ちょ、ふたりとも何やってるさ!」


喧嘩に割って入るように雉ラビが現れたのです。


「あら、ラビ。雉役? 似合わないわね」

野兎Aで十分ですよ。脇役の脇役で結構です

酷ッ! オレだって目立ちたいさ! 本編じゃなかなか出番ないから、せめてここがオレ様のでb……

うるさいわ、黙ってなさい、脇役風情


主役は私よ、でしゃばりやがったら、毛根ごと髪引っ張りぬくぞ? ゴラ


と、黒オーラ全開で言われてしまい、うな垂れる雉ラビ。相変わらず嫌な顔の犬アレン。
さーどうなるかと思っていると木陰からひょっこり顔を覗かせるものが一匹。


「あの、話進まないの?」

「可愛いお猿さん。さぁ行きましょう、これから二人旅行ね


ころりと表情の変わった桃リナリー。


「え、リナリーさん!? 話違うからね! 鬼退治だから! 島でバカンスじゃないからね!?


猿の彼女にひとめぼれした桃リナリーは、猿の手を取ってそういいました。
猿はもちろんツッコミをいれましたが、聞いていません。

そこに犬アレンが怒りました。


「桃子さん。人間様がお手を触れられる領域じゃないですよ。動物は動物同士仲良くするのが道理ですから……去れ

「何言ってるの? 犬猿の仲と言うじゃない。猿と犬は相容れぬ仲なのよ?

「ふ、所詮は迷信ですよ。僕はこんなにも彼女を愛していますから

まじで話が進ませないつもりかおまいら

「でも、お前が来たお陰で進みそうさ」


雉と猿は頭を抱えましたが、これで希望が生まれました。
桃子と犬が喧嘩しそうだったので、意を決して猿は言いました。


「桃子さん、桃子さん、お腰つけたきびだんごひとつわたしにくださいな」

「あら、ひとつといわず全部あげるわ!

「「ええええ!?」」


予想外……いや、リナリーからしたら当然の行動に唖然。
何はともあれ、猿はきび団子を得ました。
それを犬アレン、雉ラビに分けてあげたのです。


「やっぱり貴女は優しいですね。惚れました、結婚式は白いチャペルで

世界観無視!? いや、その前に結婚しないからね!

「そうさ、アレン! ここでコイツに手を出したらリナリーが怖いさ! 鬼より怖いのが今の桃子さ!


ですよね!


猿がウンウン同意してると、犬アレンは鼻で笑った。


所詮は鳥類、せいぜいビクビク怯えてればいいんですよ

「(怖ッ!)」


何はともあれ、桃子はお供を引きつれ鬼が島に向かったのです。




「で?」

「で」

「うん」



どうやって海を渡ろうか。そう模索するお供たち。
彼らの目の前には日本海の荒波にも負けず劣らずの海があり、その先には鬼ヶ島がある。

船を探すか、と雉ラビが呟いたときだった。


「あら、なにを言ってるの? 雉は空を飛んでいけるでしょ? 犬は……犬かきで渡って行きなさい


女王、桃リナリーの冷徹な一言に唖然。


「ま、まぁ……この世界観ならオレはできる……って、アレンがこの荒波で犬かきはきついさ!?」

「同じ船に乗るってだけで吐き気がするもの

「じゃあ、貴女がクロールで泳いでください。っていうかイノセンスあるじゃないですか?

「いや、世界観無視するの、やめない!?」


猿の必死な訴えにも、黒化した桃子と犬は耳を貸しません。


「あ、船があった!」


猿はどうにかこの戦いをやめさせるために、都合よく見つかった船に乗り込みました。
そして、大きな声で彼らを呼びました。


「これならみんな乗れるから早く乗っていこう!」

「「貴女がいうなら!」」


鶴の――いや、猿の一声。桃リナリーと犬アレンの機嫌は一気に良くなりました。

桃子と3匹は船に乗り、荒波を越え、鬼の待ち受ける鬼ヶ島に辿り着いたのです。




そこにたくさんの家来を引き連れ……てはいませんが。



………………



鬼――神田が、かなり不機嫌そうに立っていました。



「ユウ、なかなか角が似合ってるさ!」

これで鬼のパンツはいてたら完璧だったのに!


雉と猿の言葉に、「うるせぇ!」と声を荒げた鬼神田。


「照れなくてもいいよ。似合ってるんだからね!」


猿、グッジョブと言わんばかりに指をおったてました。
それには言葉が出なくなった鬼はそっぽ向きました。

そんな彼らのやり取りを他所に。


「……いくらあの子が一緒だからって、あの狭い空間で貴女と一緒とは……嘔吐がしました」

「あら、私なんて船ごとテメェを沈めさせたい衝動に駆られてたわよ。……堪えたけれど」


ゆらっと、不機嫌MAXの桃子と犬。
恐らく、船に一緒に乗ったことがそうとう気に食わなかったのでしょう。

それに気付いた雉ラビはおろおろと二人を止めようとしました。


「ちょっ、2人とも鬼退治が先さ!」


その言葉に、一発触発の危機だった2人は動きを止めた。


「そうだったわね、私達の目的は鬼退治」

本編で調子に乗った鬼に、制裁を

「「モノホンの地獄見せてやっから、覚悟しやがれ」」


なんだかんだ言って息の合ってる二人に、鬼は勿論、雉と猿も息を呑みました。
完全になんか違う苛立ちも混ざっています。ただのうさばらしを鬼相手にするつもりです


「テメェの苛立ちを俺に向ける気か!」

「うふふ、なんのことかしら。だって、桃太郎のお話は鬼がヌッ殺されるのが当たり前じゃない
 っていうよりも、私の可愛い可愛い(エンドレス)あの子に不埒なマネをしくさったんだから……ねぇ?


スッとイノセンスを発動させる桃リナリー。彼女は本気です。


「そうですよ。何、彼女をちゃっかり押し倒してるんですか(本編参照)。僕だって未経験ですよ?
 結婚前の清らかな彼女をよくも…! ……死刑です、塵も残らないと思え


ジャキンとイノセンス発動済みの犬アレン。彼も本気です。

消せない事実だったのか、鬼は若干頬を赤らめつつ、渦中の猿に目を向けました。


「いや、あれは――うん、恥ずかしかったかも……」

「え、ちょっとお猿さん! 事実だったんか!」

雉もびっくりの猿の恥じらいっぷりに、桃子と犬の怒りのオーラが増大しました。


「「抹殺」」

「ふざけんな!!」


鬼神田もすかさずイノセンスを発動させ、乱闘が始まりました。
桃リナリーは円舞『霧風』で鬼神田を追い込み……犬アレンは彼に銃口を向けています。


「ッ!?」


しかし、ただでやられる鬼神田じゃありません!
なんとかその場から逃げ切り界蟲『一幻』を放ちます。
桃子と犬もなんなくそれを避けます。


「ちょ、この戦闘、桃太郎のレベルじゃないさ

「だよね。どうする? 戦闘で島が崩壊したりして……」


そのまさかでした。


「あれ、ちょっと雉ラビさん。なんかでっかい地震が起きてる気がするんですけど!

「それは俺も思ったさ……おーい、お前らここ崩れっぞー!!」


早く逃げろ!
と声をあげるが、どうやら聞こえていないようだ。


あいつらは死んでも死なないな……ここは俺のイノセンスで本島に戻るさ!」

「う、うん!」

「本島まで、伸伸伸ーーん!」


もう、世界観なんか知るか
その勢いで飛べる設定無視で、雉ラビのイノセンスを使って本島に戻りました。


遠く鬼ヶ島は儚くも崩れ去っていきました。


……もう、これで終わらないかな。疲れたよラビ

それは俺もさ……


まともな2匹、つか2人は遠くの海を眺めていました。


「絶対まだ続いてるさ」


心なしか、リナリーとアレンの狂気の声が聞こえた気がしました。



「しばらくテメェの出番はお預けだからね。出しゃばってんじゃねぇぞパッツン、ゴルァ!!」

「次は僕の時代が来るんですよ。テメェは地獄で指加えて見てな、ムッツリ野郎が!」



もう、桃太郎でもなんでもないじゃないっすか。









数日後、波打ち際に現れたのは……。


ぎゃーー! ちょ、これ、神田!!


もう人間ではないよね? と疑いたくなるほどボコボコにされた神田でした。


ッ、次は、アイツら、が、争い始めやがった

「ユウ、しっかりするさ!」


ラビに支えられて神田は、がっくりと力なく首がうな垂れた。


「私、神田のこと、忘れない!」


そう言って空を見上げるのだった。


何で俺が死んだような描写してんだよ、おい!


だが、がばりと起き上がる神田。


「あ、生きてた! よかった、まじでただの骸になってたのかと…」

「なるかっ! 逃げてきたんだよ……」

「じゃあ、まじで2人があそこで争ってんのか!?」


……3人は予感した。鬼が退治されたはずのこの世界に平和なんてない。
きっと、あの黒の2人がいる限り……一生、平和は不可能なのだ。


『真の腹黒キャラは私よ。ひょっこり出てきた野郎が腹黒名乗るなんて厚かましいわ。
 あなたの活躍なんて期待していないのよ、あ゛? エセ紳士が』

『何を言ってるんですか? リアルでも二次創作でも腹黒なのは僕ですよ。
 貴女とは腹黒の質が違うんですよ。格を思い知れ、エセ乙女が』




「……神田、ラビ。とりあえず、おじいさんとおばあさんの家に戻ろう」

「桃太郎と犬が新たな鬼になったさ」

「ああ。あれは誰も退治できねぇよ」


さぁ、みんなで引越しの準備をしよう


そう思って、雉と猿、何故か鬼は帰路へとついたのでした。



終われ。